ー奇談ー學校へ行こう5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「簡単に高温を出す方法ってないかな」

神姫「あるわよ」

悠「マジで?!」

摩耶「さすが神姫さん、悠君みたいにポンコツじゃない」

悠「あれ、今さらっと酷い事いわれた?」

摩耶「言ってないよ」

悠「だよねっ♪」

千世子「じゅぎょーしまーすなのだ」

【ガグ】
別表記:なし
登場作品:HPラヴクラフト「未知なるカダスを夢に求めて」

神姫「でも、準備はいるわよ」

悠「科技大まで行かなくていい程度の準備なら」

神姫「何度の高温出したいのよ……」

悠「いや、神姫の考えは?」

神姫「酸素アセチレン炎」

千世子「ガグは夢の国に棲む毛むくじゃらの獰猛な巨人で、身長は20フィートに届き、頭頂部には鋭い牙の生えた垂直の口があり、ピンク色をした2つの目が頭の側面から2インチ飛び出しているという、並の人間ならばひと目見ただけでもおぞけをふるい、逃げ出したくなるほど恐ろしい容貌をしているのだ。肘から先がふたつに分かれた2本の腕を持つが、その掌だけでも2フィート半もの大きさなのだ。」

悠「……なるほど、それがあったか」

神姫「っていうか、高熱ていったら普通すぐに思いつく気がするけど」

亘理『酸素アセチレンて?』

悠「カーバイトって知ってるか?」

亘理『?』

悠「炭化物だ。カーバイトをを水に突っ込むと大量のアセチレンが出てくる。それに火をつけると高温になる。」

千世子「かつて夢の国の地上に住んでいたガグは、魔法の森に環状烈石の祭壇を築いてナイアーラトテップや「蕃神」とよばれる異形の神々に生贄をささげていたのだ。この忌まわしき儀式が地球の神々の知るところとなり、地下へと追放されたのだ。」

摩耶「でも確か……酸素とアセチレンの比をある正数比にすると『爆発』したよね」

悠「……したな」

神姫「爆発させたいんじゃないの?」

悠「いや、高温を出したいだけだ」

千世子「強い日差しにあたるとたちどころに息途絶えてしまうガグは、灰色の薄明かりと暗闇に覆われた魔法の森の地下に王国を築き、そこを住処としているのだ。ガグの街にそびえるコス塔の最上階には、地下へと通じる道があるのだ。この道は鉄の輪のついた巨大な石の揚げ戸で固く閉じられているのみならず、地球の神々の呪いがかかっているのでガグはソレを開けられないのだ。」

神姫「じゃあ、もうひとつの方はダメかしら」

悠「何する気だった?」

神姫「テルミット」

悠「ずぇな。安上がりにポコポコ危険な手法を考え出してくれる」

神姫「……バカにしてんの?」

悠「尊敬してます」

千世子「また、街には人間の目には巨大な円塔にしか見えない墓石が立ち並ぶ墓地があって、ときおりグールがガグの死体を掘り出しにやって来るのだ。その巨体にもかかわらずガグはグールが苦手なようで、自分たちの墓地でグールが餐宴を催しているのを見ても、どうすることもできないというのだ。」

亘理『テルミットって安上がりなの?』

摩耶「酸化鉄粉とアルミニウム粉があればいいからね。陶芸コーナーで買えるし、酸化鉄はホッカイロの中身でいいんだよ」

悠「当たり前だが酸化鉄とアルミニウム粉を混ぜて火をつけると酸化還元反応が起こって、高熱を発するんだ……。」

千世子「ガグの近くにあるズィンの窖には、ガーストというヒューマンタイプの生物が住んでいるのだ。身体の大きさは仔馬喰らいで、カンガルーのように後ろ脚で跳ねるこのガーストが、ガグの主食なのだ。新鮮なガーストの肉を得るため、ガグは窖に歩哨を立てて狩りに備えているのだが、好戦的なんガーストの集団の反撃を受けた歩哨が反対にやられてしまったこともあるようなのだ。」

亘理『犯罪が減らないのってこーゆーのが簡単に作れるからなの?』

神姫「違うわよ。こーゆーのを悪用する人間がいるからよ」

悠「おれを見ながら言うなよ……しかし、テルミットでいいな」

亘理『具体的にどのくらいの温度が出るの?』

悠「ざっと3000度……鉄が焼きとける程度だな」

千世子「しかし、ガグが何より好んだ食べ物は、眠りの壁を越えて夢の国に到達した「夢見る人」と呼ばれる人間の肉なのだ。地下に追放されてしまった後は口にする機会がめっきり減ってしまったようだが、ガグは今でもその味を懐かしい記憶として覚えているので、夢の国を訪れた人間にとっては大変危険な存在なのだ。以上、ガグのじゅぎょーだったのだ。」
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