ー奇談ー學校へ行こう5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

義鷹「悠」

悠「はい、悠君ですよ?」

義鷹「……メフィのやつがお前にこれ渡しといてくれってよ」

悠「あー……分かった。」

亘理『なーにそれ?』

悠「金と反省文」

亘理『はい?』

悠「余計な面倒を押し付けられたことに対する礼金の用意とそれの謝罪文を書かせたんだよ」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。最もグールの目撃例が多いのは、ニューイングランド地方からニューヨークにかけての、北アメリカの東海岸の地域なのだ。マンハッタン島にある先住民族の墳墓からは、グールのものと思しき犬とも人間ともつかない頭蓋骨や、トンネルを掘るグールの姿をあしらった呪術師のローブが発掘されているのだ。」

雨「金も取るとはえげつない」

悠「この金は全額、富士見の生活費と必要電化製品代だよ。謝罪文にはついでに風呂の地殻整備も考えさせて提出させた」

亘理『それって悠ちゃんとくあるの?』

悠「別におれには得ないよ。何もしてないし、もともと金は受け取らない主義だし」

亘理『きゅん』

摩耶「立った立ったフラグが立った」

千世子「ニューイングランド地方にみられる古い家屋のほとんどには地下室があって、ボイラーや洗濯機がおかれているほか、貯蔵庫として活用されているのだ。こうした地下室はグールにとっては格好の隠れ家であるだけでなく、獲物を狩るための便利な出入り口でもあったのだ。ボストンやセイラム、アーカムといった町には数多くのグールが入りこんでいて、こうした地下室を繋げるトンネルが張り巡らされていたのだ。」

悠「しかし……あのおっさん。嫌がらせなのか素なのか全部フランス語で書いてやがる。読めやしねぇ」

摩耶「僕もフランス語は無理だよ」

悠「おれも隠語ならイケるんだが……」

雨「刑事か」

神姫「別に隠語なら刑事以外の職もあるでしょ」

雨「なんか私が悪いみたくなった?!」

千世子「多分に幻想的でありながら、その細部の描写においては徹頭徹尾リアリズムに貫かれた怪物画を数多くに描き、ボストンの芸術界で良くも悪くも注目を集めていた画家のリチャード・アプトン・ピックマンは、グールを好んで題材に取り上げたのだ。」

悠「おれも昔、よく扉の絵書いてたわ」

亘理『扉の絵?』

悠「地獄の門」

亘理『なんか病んでる?』

千世子「ピックマンの怪奇趣味には、セイラムの魔女裁判において、四代前の先祖が絞首刑に処せられたという過去が関係していたらしいのだ。なにしろピックマンの手元には、この先祖から受け継がれて来た「ネクロノミコン」があったからなのだ。」

悠「そんなおれも今では肌色多めのおんにゃのこの絵が大好き」

摩耶「立派になったね」

悠「えへっ♪」

神姫「八重歯へし折れたらいいのに」

悠「まさかのチャームポイントクラッシュ?!」

千世子「後になって判明したことだが、ピックマンは絵画の多くを「本物」をモチーフに描いたのだ。イタリア系移民が移住するノース・エンド地区に構えられた彼の秘密のアトリエは、グール達の地下通路に繋がっていたのだ。グールを描いたピックマンの絵画からは、彼らが独自の生物種というわけではなく、魔術的な力によってそのような姿に変身した人間であるらしいことが窺えるのだ。彼らと親しく付き合ったピックマンもまた、やがてグールになり果てて人類社会から姿を消したのだったのだ。」

悠「近づきすぎるって怖いな」

摩耶「適度な距離感が大切なんだね」

亘理『……妖怪はセーフだよね』

摩耶「大丈夫、悠君は妖怪みたいなものだから問題なし」

悠「コラコラ」

千世子「ピックマンの友人だったランドルフ・カーターは、夢の国を旅しているときに、グールの有力者となっていた旧友と再会したのだ。夢の国のグールは夜鬼たちと同盟関係にあり、カーターはピックマンの仲介で夜鬼の助力を得ることが出来たのだ。以上、グールのじゅぎょーだったのだ。」

神姫「……ねぇ」

悠「どした?」

神姫「八重歯が……チャームポイント?」

悠「掘り返さないで!」
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