ｰ壱階空き教室ｰ

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業……工事が始まろうとしていた。

悠「うーむ……見事にぶっ壊したな」

義鷹「ふー、楽な仕事だったぜ」

悠「ちなみに壁とか床の木材は?喰ったのか?」

義鷹「いや、食える部分は少なかったし外に出しといたぜ。ほら、あそこのブルーシートの下だ」

悠「(コイツ木とかも食うんだ……。)そうか、再利用考えれるしな。」

義鷹「一応いっとくが喰うんじゃなく生命力を吸い取るんだからな」

悠「あぁ、そっか……それってエナジードレインてきな?」

義鷹「それとはまた別だが……似たようなもんだ」

悠「どゆこと?」

義鷹「めんどくせぇから説明はしないぞ。」

悠「じゃあ……奥の壁壊すか」

義鷹「雨降ってるぞ」

悠「あー……じゃあ先にブルーシートのテントを張って、壁をブチ抜いて穴掘る。頼んだぞ」

義鷹「まさか、俺ひとりにやらせる気じゃないだろうなぁ?わっざわざ手伝ってやってる俺に」

悠「オーケー、一緒にやろう」

義鷹「当たり前だ。こっちは本来手伝ってやる義理もねぇんだからな。」

悠「優しいのか厳しいのか……」

義鷹「暇なだけだ」



～作業中～


悠「よし、これで一先ず囲えたな。」

義鷹「ほっとんど俺がやったじゃねーかよ!」

悠「あのね、鉄心を素手でぶっ立てれるお前とおれの作業スピードをいっしょにすんなっ!!」

義鷹「逆切れかっ!!」

摩耶「やってるねぇ」

悠「おう。やってるぞ。今から壁を壊すつもりだ。」

摩耶「軽く言ってるけど結構大事だね」

悠「義鷹なら軽いだろ」

義鷹「なんか釈然としねぇな」

悠「細かい愚痴は最後にまとめて聞くから始めてくれ」

義鷹は手を一振りするとつま先から二の腕の中場までが大きな刃……いや、爪へと変貌させた。巨大な鎌のようなその腕を壁に突き立てる。豆腐に包丁を刺すように力を込めた様子がなくすらりと刃がつきぬけた。そして一気に切断を開始する。

ギャリリリリリリッ!!

摩耶「わぁ……電鋸要らず」

悠「電鋸どころか壊すことに賭けてはほとんどの道具がいらないな……手足のばしゃ高いところも普通に届くし落ちても死なないし」

義鷹「聞こえてんぞ」

悠「切り終わったのか?」

義鷹「ああ、押せば倒れる。」

悠「よーし、じゃあ、外に向けて倒すか……まや、マスクだ」

摩耶「りょーかい」

悠「じゃ、いくぞ……せーのっ!」

三人で押すと簡単に壁は傾いた。そこまでは良かったがおれは窓を外すことを普通に忘れていた。がっしゃーんっ!!っと映画やドラマで大惨事が起こった時の効果音と共にガラスが飛び散った……。

摩耶「ありゃりゃ……」

悠「……よし、今日はガラスを片づけるまでにしよう。穴掘りは次だ」

義鷹「おい、冥がめっちゃ睨んでるぞ」

悠「うわー、背中にプレッシャーが半端なく来てる振りむけない」

冥「ゆ～う～ちゃ～ん、ちょっとお話しがあるのナァ～!!」

摩耶「ここは任せて」

義鷹「骨は拾ってやる」

悠「シクシクシク…」