ー奇談ー學校へ行こう5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「はぁー……」

亘理『どしたの?眠たそうな顔して』

悠「普通の寝不足」

亘理『寝てないの?』

悠「寝苦しくて睡眠が浅いんだよ」

摩耶「暑いもんね最近」

悠「昨日なんて夏日記録してるらしいし、生物が痛むぜコレ」

千世子「はーい、じゅぎょーしまーすなのだ。」

【アイホート】
別表記:なし
登場作品:ラムジー・キャンベル「BeforeTHEStorm」

摩耶「もう、カレーとかの作り置きはあぶないかもね。」

悠「めっちゃくちゃ香辛料ぶっこめば平気かもな」

神姫「それ食べれるの?」

悠「違う意味では無理」

千世子「イギリスのグロウスターシャーにある地方都市ブリチェスターは、英国でも指折りの学問機関であるブリチェスター大学を中心に栄える歴史ある街だが、アメリカのアーカムやセイラムがそうであったように、魔女にまつわるくらい伝説が色濃く影を投げかけるオカルティックな土地柄を今日に伝えているのだ。」

摩耶「辛すぎるとの美味しいのは別物だからね」

悠「おれはそこそこなら辛いの好きだけどな」

摩耶「ワサビは無理だけどね」

神姫「お子様が」

悠「ワサビ喰わなくたってしなねーもん」

千世子「そのブリチェスターの郊外、近隣住民から「魔女の住処」と呼ばれている廃屋の地下には、セヴァン渓谷の地下深くに広がる巨大な迷宮に通じる入口があるのだ。」

悠「不思議のダンジョンだな」

摩耶「超迷宮ならウィザかな」

悠「うさぎに首はねられないようにはないとな」

亘理『兎怖?!』

千世子「旧支配者アイポートは、この広大な地下世界を着のままにうろつきまわる迷宮の神なのだ。アイホートの身体は青白くぶよぶよとした巨大な楕円型の塊りで、それを蹄のついた無数の足が支えており、楕円形をしたゼリー状の目を持っているのだ。」

神姫「想像しただけで気持ち悪いわね」

悠「ガンシューの敵なら目が弱点だな」

摩耶「撃ったら破裂して余計惨状になりそうだけどね」

亘理『しばらくゼリー食べたくない』

千世子「地球上の各地に崇拝者が居る他の神々と異なり、アイホートはグロウスターシャー州内のみで崇拝されている地元ローカル神で、その信者たちはブリチェスターとその近くにあるカムサイドという町に住む気のふれた人々に限られているようなのだ。」

悠「ゼリーって言えば夏はゼリーで攻めるかな……」

摩耶「お店?」

悠「そう。やっぱ涼しげなものが売れるしな」

神姫「お客さんが居ないで有名なのに?」

悠「数少ない固定客を逃がさないための努力!」

神姫「ふっ」

悠「えぇ……鼻で笑われた。」

千世子「アイホートの地下迷宮に迷い込んでしまった不運な人間は、迷宮内部を知悉しているアイホートによって巧妙に誘導されていくのだ。やがて袋小路に追い込まれた犠牲者は、アイホートにテレパシーで呼びかけられて、契約を結ぶか否かを質問されるのだ。」

摩耶「ゼリーより寒天の方がよくない?」

悠「寒天系はそこそこ既にラインナップがあるからなー」

亘理『冷やし中華は?』

悠「涼やかでいいな……って茶屋で冷麺喰うかよ」

千世子「このとき、契約を拒否したものはただちにアイホートの巨体に押しつぶされてしまうが、承諾した場合は解放されるのだ。ただし、アイホートの雛を体内に埋め込まれた状態でなのだ。犠牲者の体内で成長したアイホートの雛は、やがて宿主の身体の支配権を奪うため体内から精神攻撃を仕掛け、敗北すると廃人になってしまうのだ。何とかやり過ごしても、やがて十分に成長した雛は宿主の身体を引き裂いて飛び出してくるので、いったん宿主になってしまうと避け得ない死が待っているのだ。」

摩耶「けど、そっち方面にした方がお店としていい営業成績残しそうだけどね」

悠「いやいや……」

神姫「そうよね。なんで、変えないの?」

悠「えー……だって、飯屋なんかにしたらそれこそ新に食いつぶされるだろ」

千世子「アイホートの雛はアイホートの分身ともいうべき存在で、球状の小さな白い蜘蛛を思わせる外見をしているのだ。人間の手で容易く殺すことができるが、当然ながら親であるアイホートの怒りをかってしまうので要注意なのだ。犠牲者の身体から生まれ出たアイホートの雛は素早く逃げ去り、アイホートが地上を歩くその日まで隠れ潜むのだ。以上、アイホートのじゅぎょーだったのだ」
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