ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(12/26/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代に取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「ちぇき~って、俺だけか」

千世子「悠のあんちんが一番なのだ」

悠「おう。」

千世子「クンクン…クンクン…」

悠「な、なんだ?」

千世子「悠のあんちんから美味しそうなニオイがするのだ」

悠「ふむ…三日月で料理してるからかな」

千世子「三日月?」

摩耶「こんばんわ」

花描「よーす」

神姫「……」

千世子「うん、全員揃ったからじゅぎょーをはじめるのだ。今日はこれなのだ」

【ファイアードレイク】
生息地域:イギリス、北ヨーロッパ
出典:ヨーロッパの民間伝承

千世子「英語で竜を表す単語と言えば「ドラゴン」だが、英語にはほかにも、竜をあらわす単語「ドレイク」や「ワーム」があるのだ。ドレイクの名を持つドラゴンのなかで特に有名なのが、炎のドラゴン「ファイアードレイク」なのだ。」

花描「まさにドラゴンっぽいな」

千世子「ファイアードレイクはその名の通り、口から火を吐くことが特徴のドラゴンなのだ。ただしそれ以外の外見的特徴にはさまざまな説があり、全身が炎に包まれているとも、そもそも体が炎でできているという伝承もあるのだ。」

悠「テオテスカトルみたいだな」

神姫「あれは竜っていうより悪魔か獣よね」

千世子「ファイアードレイクは、沼地など湿度の高い場所や、深い洞窟の中に住んでいるのだ。そして自分のねぐらで財宝をまもっているのだが、ファイアードレイクが守っている財宝は他のドラゴンが守る財宝と毛色が違うのだ。1971年にイギリスで出版された、不思議な動物の紹介本なよれば……」

悠「このドラゴンが守っている財宝とは死者の墓に入れられた副葬品であり、ドラゴンの正体はその死者の魂だと信じられているらしい」

千世子「このことからファイアードレイクは「死に対する勝利の象徴となり、以降棺桶にこのドラゴンの姿を彫刻する習慣が生まれたというのだ」

花描「ドラゴンって感じがしないな」

千世子「ファイアードレイクの正体についてはほかにも様々な説があるのだ。たとえばヨーロッパ全土で有名な妖精「ウィル・オ・ウィスプ」は、ファイアードレイクとまったく同じ存在だという説があるのだ。この妖精は沼地などにあらわれる火の玉のような妖精で、日本でいえば鬼火にあたるのだ。妖精ウィスプの正体は死者の魂だというから、たしかに両者には共通点が多いといっていいのだ。」

摩耶「他にも説はあるの?」

千世子「ファイアードレイクの正体は流星や雷の説があるのだ。イギリスでは、雲に覆われた薄暗い空に奇妙な光が見えるということがあったら、それはファイアードレイクが空を飛んでいるからだ、という伝承があるのだ。以上、今日のじゅぎょーはここまでなのだ。」
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