ー奇談ー學校へ行こう5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ゴルウィって何してる?」

神姫「勉強」

悠「聞く相手を間違えたな」

神姫「どういう意味よ」

千世子「千世子はいーっぱい遊ぶのだ」

悠「こういうのが聞きたかった」

神姫「ペド野郎」

悠「うちの横に住んでる奴と一緒にすんな!!」

摩耶「今、すっごいカミングアウトしたよね」

千世子「さーて、じゅぎょーするのだ」

【アブホース】
別表記:なし
登場作品:クラーク・アシュミトン・スミス「七つの呪い」

亘理『悠ちゃん、そーゆー性癖は認めないよ!!』

悠「だから、おれじゃねーっての」

摩耶「けど、イケる口でもある」

悠「まーな」

神姫「檻の中入ってた方がよくない?」

千世子「不浄の源、奇形、忌むべきもの全ての源などと呼ばれているアブホースは、アザトースやヨグ=ソトースといった神々の中でも強力なものたちと時を同じくして、太古の地球に到来した旧支配者の一柱なのだ。」

悠「不浄の塊……」

神姫「親近感湧くでしょ」

悠「湧かないし酷くない?!」

神姫「全然」

千世子「記録されているもっとも古いアブホースのすみかは、氷河期以前のヨーロッパ北方にあったハイパーボリア大陸の中央部に聳えるヴーアミタドレス山脈の地下洞窟で、この大陸が滅んだあとはアメリカのニューイングランド地方にあるダンウィッチという村の地下や、オクラホマ州の地底深くに広がる暗黒世界ンカイなどの場所で目撃されているようなのだ。」

亘理『アメリカって凄いね色んなのが居て』

摩耶「うーん……亘理ちゃんの周りもかなり凄いと思うけど悪魔から鵼までそろい踏み」

悠「ユーマを超えてるしな」

摩耶「そのうちツチノコとかもでるかな」

悠「捕獲して賞金うはうはだな」

千世子「巨大な灰色の無定形の塊アブホースは、粘液のプールの中で膨張と分裂を飽くことなく繰り返し、忌まわしき姿の分体を絶え間なく生み出し続けているのだ。分裂と吸収を繰り返すこと以外に興味の無いこの神に崇拝をささげたとしても、見返りを与えられることは全くないので、アブホースの崇拝者や教団はほとんど知られていないのだ。」

亘理『なんかエグイ……』

悠「経験値稼ぎにはもってこいじゃね?」

神姫「喰われたらいいのに」

悠「そんなにおれの事が嫌いか」

神姫「……普通」

千世子「アブホースはこの繁殖ともいうべき活動を邪魔されることをなによりも嫌っていて、人間が洞窟に迷い込んで来ても積極的に危害を加えることはないのだ。こうした侵入者が入ってくると、アブホースは身体から感覚器官を生じさせてその身体を撫でまわし、呼吸可能な生き物だと分かって初めて攻撃を仕掛けてくるのだ。逆に金属など呼吸できない材質を感じ取ったならアブホースはたちまち興味を失い、テレパシーを用いてこの場からただちに立ち去るように伝えてくるのだ。」

悠「なんだろう、普通ってのが一番傷つく気がする」

摩耶「嫌いっていわれたかったの?」

悠「前向きな方向はないんでしょうか」

神姫「はぁ?」

悠「ごめんなさい」

亘理『謝っちゃったよ……。』

千世子「アブホースから分裂した生き物の多くは、複雑な体組織を備えた多細胞生物なのだが、跳ねまわる手足や転がる頭といった身体の一部、現実に存在する生物の突然変異体、無定形の塊や人類誕生以前の怪物など、どこかしら歪んだ奇形ばかりなのだ。」

義鷹「中途半端な繁殖は邪魔そうだな」

悠「居たのか?」

義鷹「ついさっきからな」

悠「……義鷹は増えないのか?」

義鷹「出来ないことはない」

悠「マジか?!」

千世子「こうした分体の群れはアブホースの落し子と呼ばれているが、生みの親はこうした落とし子にかけらも愛着を感じておらず、生まれたそばから触手で捕え、次々とむさぼり喰ってしまうのだ。このため、生まれおちた最初の行動は、アブホースの食欲から逃げるために洞窟の奥へと逃げ出すことなのだ。こうした落とし子の生き残りが地上世界に這い出した場合、人間にとっては恐ろしい脅威になるのだ。以上、アブホースのじゅぎょーだったのだ」
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