ー奇談ー學校へ行こう5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「タスマニアデビルに噛まれたい」

晶「タスマニアデビルは居ないけど、ついさっきそこで拾った黒いナニカならいるよ」

黒いナニカ『キシャー!!』

悠「めっちゃ威嚇してきとる。捨てろ、捨てろ。っか、なんだそれ」

晶「たぶんまっくろくろすけ的な物かな」

悠「メルヘンの欠片もねぇな。やめろよ昨日惑星からの物体Xみたからそういうの怖い」

晶「あはは、ヤダなぁ。映画じゃないか」

悠「お前……動く人体模型がなにほざいてる。」

ずるる……
晶「やめてっ!肺を引きずり出さないで!!」

千世子「はいはーい、じゅぎょーしますから内臓投げて遊ぶのやめるのだ」

【大通連】
分類:魔剣、属性:鬼切り、特殊効果:飛行
系統:日本中世説話、所持者:鈴鹿御前

悠「ちっ、授業始まったからこのへんにしといてやるよ」

晶「シクシク」

千世子「空を飛ぶ刀なのだ。所持者は、鈴鹿御前という名の、鈴鹿山に住む鬼の姫なのだ。」

悠「姫で……鬼だと?」

摩耶「どしたの?」

悠「いや、つまり……おれの嫁?」

亘理『……』

クィ……ゴッ!!
悠「マッシマー?!」

摩耶「ペットボトルって縦に当たると痛いよね」

千世子「鈴鹿御前は天竺第四天魔王の娘であるとされ「歳の頃は十六、七。天女の如き美しさ。楊柳の細身に十二単、濃い紅の袴姿。」(田村草子より)とされ、相当な美人だったようなのだ。大通連のほかにも、小通連、釛明連という飛刀を使いこなしているのだ。」

亘理『飛刀ってどういうことかな』

神姫「携えたり、手で持たなくても浮いてるんじゃない?」

悠「痛っっ……なかなか便利そうだな、ふだんは自分のまわりに浮いてて、使うときはすぐに抜ける」

千世子「ちなみに「田村草子」とは、征夷代将軍となった実在の人物、坂上田村麻呂(田村丸)を主人公とした御伽草子なのだ。田村麻呂の祖母は益田ヶ池の大蛇の化身であり、田村麻呂もその霊力を受け継いでいるとされているのだ。」

亘理『坂上、田村……どっちも苗字っぽい』

摩耶「田中中田ってひとも居るくらいだし」

悠「レベッカをベッキーっていうくらいだし」

亘理『そうか…………いや、なんか違くない?』

千世子「大通連にまつわるエピソードは以下の通りなのだ。天竺(インド)からきた鈴鹿御前が、大嶽丸という鬼と手を組んで日本転覆をもくろんでいるという噂が立ち、田村麻呂は討伐に出発。鈴鹿山へ至った田村麻呂は、討伐すべき鈴鹿御前と恋に落ち、協力して大嶽丸をうち倒すことになるのだ。」

亘理『愛だね』

悠「鳥肌が出るわ…」

摩耶「愛・覚えてますか?」

悠「涙が出るわ」

千世子「大嶽丸は、天竺の阿修羅王が「日本に魔道を引き入れよ」といって渡された三振りの魔剣(大連通、小連通、釛明通)を持っていたので、鈴鹿御前は自分に恋焦がれている大嶽丸の求愛を受け入れるふりをして、大通連、小通連を奪い取ったのだ。」

悠「美人局だな」

摩耶「ハニートラップ」

晶「ハニートースト?」

悠「甘ったるいわ!!」

千世子「魔剣を手に入れた田村麻呂が対峙すると、大嶽丸は身長丈もの巨人に変化。三百もの剣を投げて来たが、加勢していた千手観音と毘沙門天がすべてを受け止め、なぎ払ったのだ。また田村麻呂が先祖伝来の神力の宿った鏑矢を射ると、身体を鋼鉄のようにして防いだというのだ。しかし最後に鈴鹿御前が大通連を飛ばし、大嶽丸の首を取ることに成功したのだ。以上、大通連のじゅぎょーだったのだ」
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