ー奇談ー學校へ行こう4

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「ヴァレンタインなので今日のじゅぎょーはヴァジュラなのだ」

【ヴァジュラ】
別名:金剛杵、分類:銛杵、属性:雷
系統:ヴェーダ神話、所持者:インドラ

亘理『なんでっ?!』

悠「ヴァが同じだからだろ」

摩耶「っていうことは……今日からはヒンドゥー神話系の武器になるんだね」

亘理『摩耶君も平気で受け入れた?!』

千世子「ヴェーダ神話に登場する、英雄神インドラの武器なのだ。ダーディチャ聖仙の骨を使い、工芸の神トヴァシュトリが鍛えたものであるとされているのだ。この武器により、インドラは大悪竜ヴリトラを倒したのだ。」

神姫「頬切ったの?」

悠「あー、ちょっと刃物とおぼしきものがかすった」

神姫「刃物……。」

悠「どうかしたか?」

神姫「ちょつと見たことある切り痕だと思っただけ」

千世子「古代インドでは、神はデーヴァとアスラという敵対する二種族に分けられていたのだ。アスラである聖仙カシュヤパは、インドラに息子たちを殺された、復讐心燃えて祭祀を行い「インドラを殺すことのできる生き物を与えよ」と祈ったのだ。こうして黒い肌と黄金の眼、白い牙を持つ悪竜ヴリトラが誕生したのだ。ヴリトラはすぐさま全宇宙の「水」を支配し、世界は干ばつに苦しめられたのだ。」

義鷹「干ばつにするより毒でも混ぜた方が完全だろうに」

悠「それ完全抹殺だろ敵味方関係なく」

摩耶「でもジワジワ苦しめて殺すパターンは絶対に失敗するよね」

悠「そうだな。ダイハードばりに即殺しにしないとな」

千世子「インドラはこれを見て、世界の半分を差し出し、ヴリトラと和議を結ぼうと提案するのだ。さらにラムパーという美女をヴリトラに差しだし、ヴリトラはラムパーを妻としたのだ。ここでラムパーが「スラーの酒」でヴリトラを酔いつぶし、そこに大量の神酒ソーマを飲み干して力を増したインドラが現れ、不死身のヴリトラの唯一の弱点であるその口に、渾身の力を込めてヴァジュラを投げつけ、ヴリトラを倒したのだ。」

神姫「弱点で死ぬ時点で不死身じゃないわよね」

義鷹「たいていのヤツぁどっかに弱点あんだろ」

悠「おれも心臓を突かれたら死んじゃうしな」

摩耶「またまた~」

悠「いやいや、普通に即死だよ?」

千世子「インドラは、元来は雷神なのだ。そのためインドラが持つ武器ヴァジュラは、稲妻そのものであったと考えられているが、インドラの神象や絵を作っていく過程で具体的な形を与えなければならなくなり、柄の両端に刃を持つ投擲系の武器としてデザインされたのだ。起源的には、北欧神話の雷神トールが使う投げ槌ミョルニルに近いのだ。」

摩耶「紫電一閃」

悠「超級覇王電影弾」

神姫「雷神剣」

悠「雷の技はやっぱ多いな」

千世子「その後、インドラは帝釈天として仏教に取り込まれ、ヴァジュラも仏像用のアクセサリとして再度デザインされたのだ。その結果「金剛杵」と呼ばれるものが誕生したのだ。金剛杵はさらに、独銛杵、五銛杵などに分岐したのだ。ただし、もともと実戦で使われた武器を起源としていないので、これらの違いはあくまでもデザイン上のものに過ぎないのだ。以上、ヴァジュラのじゅぎょーだったのだ。」

亘理『悠ちゃん、悠ちゃん』

悠「あー?」

亘理『せっかくのバレンタインだし、コレあげりゅ』

悠「何これ……?」

亘理『クッキーのようなモノ!!』

悠「……」

後楽「お、兄ちゃん羨ましいな。一枚もーらいっとパクっ……うっ」
ドタッ…

悠「……」

亘理『……』

摩耶「悠君、帰りにギョーザ食べてかない?」

悠「いいな。焼き五、湯で五、ニンニクMaxで」
88/100ページ
スキ