ー奇談ー學校へ行こう4

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「はー……くしゅん!じゅぎょーしましゅのだ。」

【ミストルティンの槍】
分類:投槍、属性:木、特殊効果:‐
系統:北欧神話、所持者:ヘズ

悠「鼻水でてっぞ」

千世子「えっ?!」

摩耶「とても分かりやすい嘘だね」

悠「てへぺろ」

神姫「……」

ゴンっ!
悠「ギャン!!」

千世子「……んんっ、盲目の神ヘズ(オーディンの後継者、光の神バルバドの弟)が、ロキにそそのかされて使ったヤドリキの槍なのだ。攻撃力が強いわけでもなく、何かしらの魔力効果があった訳でもないのだが、この星のすべての物質の中で唯一バルドルを傷つけられる、というルールを持っていた素材で作られた武器なのだ。」

悠「く、くびに……ひじがっ……」

摩耶「頭は堅いからちゃんと軟らかい部位を狙ってくるのが流石だね」

神姫「蚊がいたのよ」

悠「時期ハズレも甚だしい蚊だなっ!」

千世子「北欧神話の主神オーディンの妻フリッグは、息子バルバドが死ぬ夢を見た後、この世に存在するすべてのものに招集をかけ「けっしてバルドルを傷つけない」と契約させたのだ。しかし、バルバドのことをやっかんでいたロキは変装してフリッグと会い、ヴァルハラの西に生えているヤドリギ(宿り木、他の木に寄生して生えてる木)が、若すぎたために契約から除外されている事を聞きだし、密かにヤドリギを使って槍を作りだしたのだ。」

亘理『まぁ、悠ちゃんが嘘ついたのがわるいし』

悠「些細な嘘と首への一撃は差が大きすぎないか?」

摩耶「サプライズだよ」

悠「意味間違ってません?」

義鷹「首くらい取り外せ」

悠「そんなギミック着いてません」

雨「引っ込めたら?」

悠「亀じゃねーよ」

摩耶「下に生えてるのは?」

悠「んー、亀ってよりアナコンダ?」

神姫「……」
ピッ……ドンッ!!

悠「おっと!」

摩耶「あ、避けた」

神姫「……」

クィ……ベチン!!
悠「み゛ぎゃっ!」

神姫「私の射程はこの教室くらい捉えてるわよ。」

千世子「アスガルドの神々は、誰にも傷つけられない身体になっていたバルバドに向かって色々なものを投げつける遊びを楽しんでいたが、バルバドの弟ヘズは、目が見えず狙いが定められないので神々の輪から離れていたのだ。しかし、そこにロキが現れ、自分が方向を教えてやるので遊びに参加せよ、とミストルティンの槍を手渡したのだ。喜んだヘズが槍を投げると、それはバルドゥルの背を貫き、兄の命を奪ったのだ。」

亘理『えげつな…』

摩耶「見事に自分の手は汚してないね」

悠「闘いの……上手い……奴だな…。」

義鷹「お前……瀕死だぞ」

悠「完全に気が抜けてたのにキツイ一撃が来たからな」

千世子「ケルトのドルドイが、ヤドリギを生命力の象徴として特に信仰の対象としたのは、冬になってもヤドリギの葉は青々としているためなのだ。英語でヤドリギをあらわすと「mistletoe」はミストルティンに由来するといわれているのだ。ちなみにヤドリギの下にいる少女には誰でもキスしていいという、とんでもない風習もあるのだ。以上ミストルティンの槍のじゅぎょーだったのだ。」
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