ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(12/15/夜)ー

毎夜に八時に光をともす教室。
廃校で行われる不思議な内容の授業。

今日も三人の生徒が集まっている。

千世子「みんな、集まってるねー?」

悠「小鳥遊悠、ちぇきだ。」

摩耶「摩耶、今日も元気にいまーす」

神姫「……神姫いるわ。」

千世子「うんうん、じゃあ、じゅぎょーしまーす。英雄シグルズはレギンにそそのかされて、一緒にファフニールの住む洞窟へと向かいます。そして洞窟の地面に掘った穴に身をひそめたのだ。ファフニールが穴の上を通りすぎるときに、弱点である柔らかい腹部を剣で突くためなのだ。作戦は見事に成功し、ファフニールは宝を奪ったものにも災いがおとずれることを話すと息絶えたのだ。」

摩耶「呆気ないね。」

悠「ドラゴンっても生き物だからな。俺はどんな化け物でも死の腮からは逃れられないと思ってるし。」

神姫「永遠に死なないなら永遠に暇潰しができるわよ?」

悠「ゾッとする。」

千世子「えーと、じゅぎょー聞いてください。ファフニールの心臓に不思議な力があることはレギンしか知らなかった。シグルズはレギンのために竜の心臓を焼くが、やけどした指を口に入れたときに竜の血をなめ、動物の声を理解できるようになったのだ。動物たちの声から、レギンが用済みのジークフリードを殺そうとしていることを知ったシグルズは、逆にレギンを殺してファフニールの財宝を奪い、旅に出たのだ。」

摩耶「シグルズのひとり勝ちだね。」

千世子「この後シグルズは、愛し合っていた女性との仲を引き裂かれ、若くして悲劇的な死をとげることになるのだ。このシグルズの死も、財宝の呪いによるものなのかもしれない。」

悠「バッドエンド~」

神姫「そもそも勘違いされて殺された時点で、ルートミスよね。」

千世子「ちなみにファフニールの財宝は、シグルズの死後何人もの人の手に渡っているが、その持ち主はみな不幸にあっているのだ。」

悠「呪われてるなぁ」

千世子「ヨーロッパ中央部のドイツには「ニーベルゲンの歌」という伝承がある。その内容は北欧神話のファフニールの話しにひじょーに似ているけど、竜の名前が「レギン」で、その血を浴びると無敵の皮膚を手に入れられたり、英雄の名前が「ジークフリード」で、シグルズとはまったくちがう粗暴な性格だという違いがあるのだ。」

悠「ジークフリードは色々有名だかな。」

摩耶「葉っぱ一枚分が不死身じゃないんだよね」

千世子「ニーベルゲンの指輪はドイツに伝わり神話「ゲルマン神話」の流れを組んでいるのだ。北欧神話はゲルマン神話から派生したといわれてるので、両者に似た部分があるのもうなずけるのだ。」

悠「あ、そうだ。ドイツの作曲家ワーグナーは、北欧神話とニーベルゲンの歌をもとに、オペラ「ニーベルゲンの指輪」を完成させたんだ。この作品ではジークフリードが主人公だけど、性格はシグルズに近くて、物語の内容も北欧神話に近い。このオペラの内容が世界的に有名になったから、ファフニールとレギン、シグルズとジークフリードは今でも混同されやすくなってる。」

神姫「なに、悠オペラとか好きなの?」

悠「クラシックは毎日聴いてるよ。」
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