ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(12/14/夜)ー

ビル郡の合間に取り残された廃校。

今夜も浮世離れの授業が始まろうとしていた。

千世子「はい、じゃあ昨日の続きをします。なんのドラゴンの勉強をしていましたか?神姫ねーちん」

神姫「北欧神話にでてくるファフニール」

千世子「はい、そうなのだ。それじゃあ、ファフニールの正体はなんでしたか、まーや」

摩耶「ドヴェルグっていう小人族でーす」

千世子「はい正解。小人族ドヴェルグのなかには魔法が使える者がすくなくない。あるとき小人族の兄弟が、いつものように獺(カワウソ)に変身して狩りをしていたのだ。ところが兄弟のひとりが、彼を本物のカワウソと勘違いした神々によって殺されてしまうのだ。これに怒った小人族の父親は、莫大な量の財宝を神に要求したのだ。この父親こそファフニールの父親で、神に殺されたのはファフニールの兄弟だったなのだ。」

摩耶「慰謝料とかを請求する感じだね。」

悠「まぁ、その辺りのことは昔からお約束みたいなもんなんだろ。地獄の沙汰も金次第ってやつだよ。」

千世子「神は小人族の法外な要求になんとか応えた。財宝のなかには「フロッティ」という名剣や、「エーギル」という兜など特別な力のある武具や道具も含まれていたのだ。」

摩耶「一件落着だね。」

千世子「望み通りの財宝を手に入れて喜んだ父親だったが、その財宝に、持ち主に災いをもたらす呪いがかけられていることには気づいていなかった。」

悠「これだから神ってやつは…」

神姫「ぁん?」

悠「いやいや、神姫じゃないから」

千世子「呪いの力によって、父の財宝を独り占めしたいという欲望に駆られたファフニールは、弟のレギンと一緒に父親を殺すと、財宝すべてを奪って逃走。財宝を守るために自分に魔法をかけ、巨大なドラコンに変身したのだ。」

摩耶「これが竜の生まれた理由かぁ。人を呪わば穴二つだね。」

千世子「なお、ファフニールがドラゴンに変身した理由はいくつかの伝承で違いがある。別の伝承では…」

摩耶「はいはーい。それ予習してきたよ。呪いがかかっていたのは財宝全体じゃなく「アンドヴァリナンド」って指輪で、ファフニールは自分の意思じゃなく、指輪の呪いで強制的にドラゴンにされちゃうんだよね」

千世子「まーやは偉いのだ。千世子は嬉しいぞ!」


悠「やるじゃん」

摩耶「えっへん」

千世子「さて、ファフニールの弟であるレギンは、兄の財宝を奪おうと考えた。ファフニールの強さをよく知るレギンは、自分が育てた勇士「シグルズ」に竜を殺させようとする。彼は最高神オーディンの血を引き、騎士道精神にあふれた北欧屈指の英雄なのだ。」

摩耶「召喚獣を思い浮かべるね。」

悠「斬・鉄・剣!」

神姫「…私はようじんぼうの方が好きだわ。」


悠「お!」

神姫「……」

千世子「じゃあ、今日はここまで、明日は英雄シグルズとファフニールの戦いからじゅぎょーするなのだ。」
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