ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(12/12/夜)ー

夜の八時。
今日も浮世離れした授業が始まろうとしていた。

千世子は黒板に文字を書いていく。

ガルグイユ
生息地域:ルーアン(フランス)
出展:キリスト教の伝承、フランスの民俗伝承

千世子「はい、じゃあ、じゅぎょーを始めるのだ。今日はこれ、ガルグイユ」

摩耶「ルーアンてセーヌ河が流れてる場所だっけ?」

悠「えと…細かい地理は…」

神姫「……フランスの北西部にある都市よ。」

千世子「みんなよく知ってるな。せんせーはうれしいのだ。そう、セーヌ河にはその昔、ガルグイユと呼ばれるドラゴンが住み着き、住民を襲っていたのだ。ガルグイユは蛇のような体に灰緑の甲羅を背負ったドラゴンで、手足には膜のようなヒレがあったと言われるのだ。」

摩耶「ラプラスみたな感じかな?」

悠「あんな可愛くは無いだろうな」

千世子「口は細くとがり、目は宝石のように輝いていた。性格は非常に凶暴で、人や動物を襲って食い殺したり、村が洪水になるほどの水を口から吐き出して民衆を苦しめたのだ。ちなみにガルグイユと言う名前はこの習性からつけられたものなのだ。」

摩耶「どういうこと?」

神姫「あ、悠に似てるわね」

悠「どこが!?」

神姫「ガルグイユって大酒飲みって意味でしょ」

摩耶「わ、バッチリだね」

悠「……」

千世子「ガルグイユの物語りは、ゲオルギウスのドラゴンや聖マルガリータのドラゴンと同様に、キリスト教の聖者が竜をとらえるというものなのだ。物語の細部は伝承によって異なるが、おおむねは次のような感じなのだ。」

そう言い終わると、千世子は各々にプリントを配る。

悠「えと、ガルグイユを退治すべく、キリスト教の大司教がガルグイユの住みかへと乗り込む」

摩耶「ガルグイユを見つけると、竜の前で十字をきった。するとガルグイユは今までの獰猛さがウソのようにおとなしくなった。」

神姫「ガルグイユは大司教によって街につれてこられ、人々の手で焼き殺された…」

摩耶「基本的にラストは人々に殺されるね」

悠「化け物は人に殺されるのが宿命だからな」

千世子「ガルグイユという名前はフランス語で、英語では「ガーゴイル」となるのだ。ガーゴイルといえば?」


摩耶「はーい、ファンタジー作品に登場する石像の怪物~」

千世子「正解。一般的に怪物のガーゴイルは「普段は石像の姿をしているが、人間が近づいたりすると動き出して襲う」という特徴をそなえてるのだ。この怪物ガーゴイルは、ヨーロッパ各地の屋根の上に見られる彫刻「ガーゴイル」から生まれたものとされてるのだ」

摩耶「悠くん家もあるよね」

悠「ガーゴイルじゃなく、鬼瓦な。雨樋の出口になってて口から雨水を吐き出すの。」

千世子「ガーゴイルも鬼瓦も魔除けのような役目があるのだ。」

悠「うちには魔が蔓延ってるけどな…」

千世子「彫刻のガーゴイルはフランス語だとガルグイユになるのだ。この語源がドラゴンのガルグイユだという説があって、これが正しいとすれば悪の水竜が建物の守り神に昇格したことになるのだ。ただ、彫刻ガルグイユの語源としてもっとも有力なのは、ラテン語で喉を意味する「gugulio」から派生したとする説なのだ。」

悠「あ、フランスには「ガルグイユ」って料理があるぞ。ゆでた野菜をオイルであえた料理なんだけど。まぁ、ドラゴンのガルグイユとは関係ないけどな」

千世子「謎の豆知識に千世子はじゃっかん、あんちんに嫉妬しつつ…今日の授業はここまでなのだ。明日からは「ファフニール」の授業なのだ!」
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