ー奇談ー學校へ行こう4

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「妖怪のじゅぎょーもいよいよ終盤に近付いてきたのだ。それで、今日からは四国の妖怪なのだ。」

【豆狸】
西日本に伝わる化け狸

後楽「四国といえばおじさんだな。徳島、香川、愛媛、高知の四国は海に囲まれて、狐の代わりに狸が沢山住んでるんだぜ。妖怪大国だ。」

悠「だったら四国に帰ってくれていいぞ」

後楽「おじさんはシティボーイだからな」

悠「ボーイじゃね無いだろ古狸!!」

千世子「ひとを化かす妖怪の代表といえば、狐と狸なのだ。ひとを化かす能力を持った狸は「化け狸」とよばれ、地域ごとに様々な別名、亜種が存在するのだ。今回じゅぎょーする「豆狸」は化け狸の一種で、西日本一帯に伝承が残っているのだ。普通の狸よりも体が小さく「子犬程のほどの大きさ」と表現される、可愛らしい妖怪なのだ。」

揺光【子犬程の小狐ならここにもおるがのぅ】

灼羅「そこまでちいちゃくないのじゃ!!」

悠「小さいは可愛い」

亘理『むすっー』

摩耶「大きい女性(ひと)は?」

悠「美人だな」

亘理『よっしゃーー!!』

千世子「昔話などでは、化け狸が人間を化かすときに、葉っぱを頭にのせて術をつかうシーンがよくみられるのだ。だが、豆狸は葉っぱだはなく別の物を頭にのせるというのだ。それはなんと……「陰囊」なのだ。」

亘理『いんのう?』

悠「金玉の袋だ。」

ガンッ!!

亘理『な、なにいってんだょうっ///』

摩耶「亘理ちゃん、ポルターガイストってるよ。机降ろして、降ろして」

神姫「今、いい角度で当たったわね。」

千世子「江戸時代後期に書かれた奇談を集めた本「絵本百物語」によれば、豆狸の陰囊は非常に大きく、伸ばせばタタミ八畳分まで広がるというのだ。豆狸は陰囊をかぶって他のものに化けたり、広げて立派な屋敷と勘違いさせるなど、多彩な技で人間を騙すのだ。」

悠「キンタマジックだな」

神姫「……」

後楽「兄ちゃんよ……今のは無いぜ」

悠「五秒の前のおれをブチ殺したいわ」

千世子「豆狸の伝承は地方によって微妙に異なるのだ。兵庫県神戸市の日本酒の名産地「灘区」では、豆狸は酒蔵に住むといい「蔵に豆狸が1、2匹いないといい酒ができない」とありがたがられていたのだ。徳島県の豆狸は、夜になると山の頂上に火を灯す。この灯が現れると、次の日は雨が降るのだ。」

悠「いかんなぁ、ついついいってしまう」

摩耶「お口チャックノリスができてないね」

神姫「縫いつければどう?もしくはホッチキスで止めるとか?」

悠「痛い痛い……。そういう痛いのは嫌」

千世子「なかでも有名な豆狸は、四国の東側、徳島県鳴門市に住んでいた「赤殿中」なのだ。赤殿中は赤い殿中(ちゃんちゃんこ)を着た子供に化け、通行人に「背負ってくれ」としつこくせがむのだ。妖怪の基本パターンとして、背負えと頼む妖怪を背負うとろくなことが起きないのだが、赤殿中に関してはこのパターンがまったく当てはまらないのだ。」

悠「それでも背負う気にはならないよな?」

摩耶「とかいって最終的に背負うんだよね」

悠「気分次第だな」

千世子「人間に背負われた赤殿中は、足をばたつかせながら無邪気に喜ぶだけなのだ。鳴門市には赤殿中を祀った祠があり、今でもお供えや狸の人形が置かれているのだ。以上、豆狸のじゅぎょーだったのだ。」

後楽「ちなみに狸の妖怪の本場は四国だといわれててな、とくに徳島県は狸の街として知られ、狸を祀った祠や神社が、600以上街のいたるところにあるんだぜ。」
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