ー奇談ー學校へ行こう4

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

摩耶「筋肉ほぐしてる?」

悠「だるだるな感じ」

摩耶「余裕だね~」

悠「余裕っか……んー、まぁ、ぼちぼちだ」

千世子「ほーい、じゅぎょー始めまーすなのだ。」

【かい撫で&がんばり入道】
便所は妖怪ワンダーランド!

後楽「なんだ、また、ひと暴れするのかよ」

悠「分からない。」

義鷹「血気盛んだな」

悠「若いからな」

揺光【お盛んじゃな】

悠「意味が違ってくる」

千世子「年の節目である12月31日と、暦の節目である2月3日の夜にトイレにいくときは心の準備が必要なのだ。トイレが和式ならなおさらなのだ。なぜなら12月31日のトイレには「がんばり入道」、2月3日には「かい撫で」という妖怪が出現するからなのだ。」

悠「おれは毎月25日にゴリラの化け物が現れるけどな」

摩耶「別に25日しばりってこともないでしょ」

悠「会うときは何か一日中いっしょな時もあるしな」

神姫「ゴリラの化け物って部分は否定とか無いのね」

摩耶「僕は言ってないし」

悠「あれー…おれオンリー?」

千世子「かい撫では京都府などに伝承が残る妖怪なのだ。節分の日の夜に和式トイレで用を足していると、便器から手を出して尻を撫でてくるのだ。かい撫では尻を撫でるだけでそれ以上の事はしないが、撫でられたくないのなら「紅い紙やろうか白い紙やろうか」と唱えれば手を引っ込めるというのだ。」

悠「尻は撫でるもんじゃなく掴むもんだろ」

神姫「……」

メキキ……
悠「い、痛い!頭掴まないで!頭掴まないで!」

亘理『アイアンクローだ』

摩耶「ドラゴンクローかな」

亘理『じゃあ、冥ちゃんがやったらキャットクローだ!』

悠「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛……」

千世子「一方がんばり入道は、窓の外からトイレを覗きこむ妖怪なのだ。がんばり入道は僧侶の姿をしていて、盲目だというのだ。盲目のがんばり入道に自分が来たことを知らせるには、入る前の咳払いが効果的なのだ。もし咳払いを忘れて入道とあってしまったら、「がんばり入道ホトトギス」という呪文を唱えれば、この妖怪は消えてくれるのだ。」

悠「あぁ……頭の中に直接音がした……」

摩耶「ニュータイプ?」

悠「直感的な音じゃなく骨が壊れていく音なんだけど……」

神姫「グシャッたら聞こえなくなるわよ」

悠「音以外にも沢山の物を失うよ!!」

千世子「火の神やかまどの神など、昔から日本には様々なものに神様がいると考えていたのだ。そしてトイレにも神様、いわゆる「便所神」がいてトイレを守っていると考えていたのだ。かい撫でとがんばり入道も、妖怪ではなく、便所神と扱われることがあるのだ。」

悠「トイレにはそれはそれは綺麗な神様がいる……って歌あったよな」

摩耶「トイレの神様だね」

悠「なんかエロいよな」

雨「有害図書の読みすぎ」

悠「でへへ」

神姫「はぁ……」

千世子「多くの伝承では、便所神はかい撫でなどと違って「美人できれい好きな女性」「(盲目や片手などが無いなど)身体の一部が欠けている」という外見的特徴があるのだ。」

悠「そういう女っていいよな」

摩耶「片足義足とか」

悠「……」

義鷹「静かになったな」

摩耶「たぶん暫く静かだよ」

千世子「便所神はトイレの神様であると同時に、出産の神でもあったのだ。多くの地方では、妊婦がトイレを綺麗に掃除すると元気な子供が生まれると信じられていたし、関東地方では、赤ちゃんが元気に育つように便所神にお祈りする風習があるのだ。」

悠「……」

亘理『どーした、悠ちゃん、元気出せよ~』

神姫「なんで静かになったの?」

摩耶「あはっ、なんでかな」

千世子「昔の人は、出産は出血を伴うために不浄な物と考えていた。不浄を広げないように「産屋」という子供を産む専用の小屋も作られていたほどなのだ。この不浄は神々も触れないと考えていたのだが、便所神のような出産を担当する神だけは、不浄を嫌わず母子を守ってくれるというのだ。以上、かい撫でがんばり入道のじゅぎょーだったのだ」
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