ｰ教室ｰ

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

摩耶「ふあ～ぁ。」

悠「ひとがあくびしてると指突っ込みたくなるよな」

神姫「やられた側は殺したくなるけどね」

摩耶「でも、そんなことしたら勢い余って指をガチュちゃわない?」

悠「ブチっちゃわなかったらいいんじゃないかな」

要「色んな意味でなんの話しだよ」

千世子「ほーい、それじゃ今日からは近畿、関西の妖怪のじゅぎょーに入るのだ。」

悠｢滋賀、京都、奈良、和歌山、大阪、兵庫だな。｣

摩耶「島根の子供は兵庫県をぴょーご県としか発音できないらしいね。」

要「そんな馬鹿な……」

揺光【平城京に平安京……古くから日本の都であった近畿地方は、古式ゆかしい妖怪どもが首をならべておるな。そして、白面金毛九尾こと妾の授業じゃな】

千世子「九尾の狐は前にしたからこれなのだ」

【鵼】
なんでもぐちゃまぜモンスター

義鷹「ぁ?」

揺光【なんと冷たいのぅ、冷たいのぅ～】
ビシビシビシ

悠「なんでおれを尻尾でたたくねん!見た目に反してけっこう痛いんだよ!!」

千世子「時は平安時代末期、第76代天皇である近衛天皇は、ある妖怪に苦しめられていたのだ。その妖怪は毎晩丑三つ時に暗雲の姿で現れて天皇の暮らす御所を覆い、不気味な鳴き声をあげて天皇を震え上がらせたのだ。これが毎晩続き、ついに天皇は病気になってしまったのだ。この妖怪の正体こそ鵼なのだ。」

揺光【おー、怖や、怖や】

義鷹「男たぶらかせて一国沈めかけた狐にいわれたくねぇよ」

悠「判定は?」

灼羅「どっちも邪獣じゃ」

義鷹「子狐がうるせーぞ」

揺光【幼狐!】

悠「ロリ狐っ娘!」

灼羅「なんで、悠まで混じっとる!」

千世子「鵼の姿は、頭は猿、身体は狸、手足は虎、尻尾は蛇と、さまざまな動物が合体した奇怪なのもだったのだ。」

亘理『義鷹はなんだったけ?』

義鷹「鳴き声はトラツグミ、頭は猫、身体は鷹だ。けど別に何にでも変化させられる」

千世子「この鵼は、鎌倉時代に書かれたといわれ、平安時代末期の権力者「平家」について書かれた書物「平家物語」や、その「平家物語」の異本とされている「源平盛衰記」などに登場してるのだ。」

悠「ねーこ、ねーこ、ねーこ」

義鷹「猫コールすんな。猫なら冥でも抱いてろよ」

悠「管理人ちゃんは予想以上に猫だからな、尻尾とか触ろうとしたら掻かれるし」

揺光【……】

ビシバシベチッ!

悠「だから痛いっーの」

揺光【ここに九本もあろう。】

千世子「鵼はけっきょく、源頼政という武将に矢で撃たれて絶命したのだ。頼政に倒された後の鵼がどうなったかは資料によってさまざまで、鵼の死体を船に乗せて川に流したとも、京都の清水寺の丘に埋めたともいわれてるのだ。」

悠「実際は?」

義鷹「怪獣射(かいじゅうい)の頼政か、確かアイツに射られたのは義虎(よしとら)だったな。バラバラにされて本体を右手に移して逃げたらしいな。元気にしてんじゃねぇのかな」

悠「義鷹の兄弟か?」

義鷹「同種の妖怪だ」

千世子「鵼のその後として面白い物に「鵼の霊が馬となり、木下という名で頼政に飼われた」というものがあるのだ。ところが名馬となった鵼は、頼政の上司である平家の人間に取り上げられるのだ。この横暴に怒った頼政は反平家の兵を起こすが、逆に殺されてしまうのだ。鵼は、馬に化けることで頼政へ復讐したのかもしれないのだ。以上、鵼のじゅぎょーだったのだ」

なのは「あのトラツグミってなんですか?」

義鷹「鳥だ」

悠「鱗模様の羽毛を持三十センチくらいの鳥だよ」