ー奇談ー學校へ行こう4

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

義鷹「お前って普段携帯はもたない癖にゲームはもってるんだな」

悠「ゲームとアイポッドは必需品だからな」

後楽「なら、財布はおじさんが預かっといてやるよ」

悠「うっせぇボケ」

後楽「どう思う?」

揺光【妾なら死ねと言っておったな】

後楽「もっとひどかった……。」

千世子「はーい、じ・ゅ・ぎょーはじめまーすなのだ。」

【泥田坊】
農夫の怨念が産む妖怪

悠「やってみるか?」

義鷹「そういうのは美兎のが得意だ。おれは握りつぶすからダメだ。」

悠「あー……分かるわ。おれも昔はよくイラついてコントローラーぶっ壊してたし」

神姫「癇癪持ちのガキみたいね」

悠「少年の心を持ってるといってくれ。」

後楽「おじさんの事か?」

悠「お前の少年心なんかどぶに捨てちまえ!」

千世子「日本人ははるか昔、縄文時代からずっとコメを食べて暮らしてきた民族なのだ。そのため「稲」や、米をしまっておく「蔵」、そして米を育てる「水田」にまつわる妖怪は数多いのだ。泥田坊は特に水田に関する妖怪なのだ。」

悠「妖怪米喰い女ならよく知ってるんだけどな」

亘理『どこの女よっ!』

悠「新宿の女だな」

神姫「徳田さんの事?」

悠「ああ、なんでもバクバク喰うけど米別格に良く喰うんだよ。ま、美味しそうに食ってる時は可愛いんだけどな」

亘理『ぶー……』

悠「なんで、睨んでるん?」

亘理『ぶぇっっにぃぃ!』

悠「えぇ……」

千世子「泥田坊は毎度おなじみ、江戸時代の妖怪画家「鳥山石燕」の画集「今昔百鬼拾遺」に登場するのだ。この本で泥田坊は、泥の田んぼから真っ黒な上半身をだした姿で描かれているのだ。その頭は禿げあがり、手の指は三本。目玉が一つしかなく、服も着ていないのだ。泥田坊は夜な夜な現れては、「田をかえせ~」と罵るのだというのだ。」

後楽「おじさんはニートと罵られても全然平気だ。」

雨「少しは気にしなさいよ」

悠「ほっとけ、ほっとけ、いうだけ無駄だから。」

要「もう諦めてるな」

悠「学習してるといってくれ。」

千世子「「今昔百鬼拾遺」の絵には泥田坊の生まれた由来も書かれているのだ。それによれば泥田坊の正体は、北国に住んでいた老人なのだ。老人は苦労して田んぼを開拓し、死ぬときにこの水田を息子に譲った。だが、この息子というのが酒飲みのろくでなしで、農家の仕事を放棄し、他人に田を売ってしまったのだ。失望した老人は泥田坊となり、毎晩田んぼに現れるようになったのだ。」

悠「うちには毎晩蚊が一匹現れてる」

神姫「殺虫剤まくなりして殺しなさいよ」

雨「一寸の虫にも五分の魂よ!!」

悠「雨、ならではの叫びだな」

神姫「害虫駆除って言葉があるのよ」

悠「問答無用って言葉も有るな」

神姫「……なに?」

悠「なんでも無いでありますっ!」

千世子「ただし、泥田坊が誰かに対して「田を返せ」といってるのかは解らないのだ。」

後楽「田んぼなんか減ってきてるよな」

悠「おれは土いじり好きだけどな。花でも野菜でも育ててると面白いし」

後楽「そういやぁ、兄ちゃん家の庭には色んなもんが咲いてるな。」

悠「次はペポパンプキンかドスビスカスを育てたいな」

要「マギュル装備でも作る気か」

千世子「田んぼを買ったものに「田を返せ」と訴えているのかもしれないし、農業を軽視する不肖の息子に「田(の土)を(ひっくり)かえせ」……つまり、「耕せ」としかり飛ばしているのかもしれないのだ。いじょー、泥田坊のじゅぎょーだったのだ。」
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