ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(12/8/夜)ー

例によって八時になると夜の授業が始まろうとしていた。
身の丈と不一致な白衣を着た幼女もとい、先生の千世子が主席を取り始める。

千世子「悠のあんちん」

悠「ちぇき。」

千世子「まーや。」

摩耶「はい、今日も元気です」

千世子「神姫ねーちん」

神姫「居るわよ。見たらわかるでしょ」

千世子「あぅ…」

悠「ぴよこ気にしなくていいぞ」

千世子「う、うんっ!」

神姫「……」

神姫は誰にも聞こえない声でごめんといった。

千世子「じゃあ、今日は聖ゲオルギウスのドラゴン最後のじゅぎょー。ドラゴンを退治したゲオルギウスは、キリスト教のなかでも人気のある聖人として崇められている」

神姫「つまり、私みたいなものね」

悠「神姫は竜側じゃね?あと、崇めっていうか怖れ…」

ピッ…ドゴッ!!
神姫が指を弾くと悠は何かが上から降ってきたように床に押しつぶれる

千世子「あんちん…なにしてるのだ?」

悠「ち、ちょっとした事故だ」

神姫「ふんっ」

摩耶「……(なるほど、そういう技(トリック)か)」

千世子「えーと…聖ゲオルギウス自身は三世紀後半ごろの実在の人物だったといわれているが、その伝説の大部分は創作らしいのだ。これまでに授業をしたドラゴン退治の伝説も創作の可能性が濃厚だ。現在では、聖ゲオルギウスは西アジア出身の軍人で、ヨーロッパでキリスト教が大迫害を受けた時に殺されたと考えられている。」

摩耶「宗教は殺伐してるよね」

悠「神なんてそんなもんさ。俺たちは無数の神をつくり、無数の神を殺す。人が神をつくるのか神が人をつくるのかなんて実際はわからない。」

神姫「それで、どうしてゲオルギウスは伝説のひとになったの?」

千世子「うん。キリスト教への信仰ゆえに命を落とした「殉教者」になったゲオルギウスは、聖人としてヨーロッパ中で信仰の対象になったのだ。信仰が広まるにつれて、彼がさまざまな奇跡を起こしたという伝説が追加され、それが「黄金伝説」でまとめられたという訳なのだ。ドラゴン退治の逸話も、ゲオルギウスの死後700年たった11世紀ごろに作られた伝承だとされてる。」

摩耶「噂の独り歩きみたいだね」

悠「だな。伝言ゲームみたいなところもきっとあったんだろうし。」

神姫「ああ、悠の性癖がオープンマニアックなバイって噂とか」

悠「それは神姫が勝手に言いだしたアレだろ!!!」

摩耶「それは噂じゃなくて真実だしね」

神姫「うわ…マジで引くわ。」

悠「しまったツッコミがいない」

千世子「はいはーい!!私語しないでくださーーい!!」

「「「すいません」」」

千世子「もうっ。」

摩耶「はい、ちょこせんせー。質問です。今でもゲオルギウスは人気なんですか」

千世子「そうだなー。ヨーロッパの国々でも、最も深く聖ゲオルギウスを信仰しているのは、イギリスを構成する四つの国の一つ「イングランド」。イングランドの国旗は白地に赤い十字架が描かれたものだが、これはそのままずばり「セイントジョージクロス」つまり聖ゲオルギウスの十字という紋章なのだ。……はい、じゅぎょーはここまでです。次回は聖マルガリータのドラゴンのじゅぎょーです」

悠「終わったな、しん…」

摩耶「もう居ないね」

千世子「神姫ねーちんは素早いなぁ」
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