ー奇談ー學校へ行こう3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「うーむ……摩耶が居ないとどうも気合が入らん。王手」

義鷹「そのやる気無い状態で指されると腹立つな」

亘理『しかも負けてやんの』

義鷹「うっせー……。」

揺光【……】
ゴォォォォォォ……

神姫「その気持ち悪い七色の火だして何してるの」

揺光【気持ち悪いとは言ってくれる……。昨日は勢いで出したので気づかなかったが、やはりここは結界内なんじゃな。妾の霊力を根こそぎ削り取って霧散状態にしておる】

神姫「ふぅん。」

揺光【興味なしじゃな】

神姫「技術がダメなら力でねじ伏せればいいのよ。」

揺光【なんとも乱暴な答えじゃのぅ。コンコン♪】

千世子「まーやは欠席と……じゃあ、じゅぎょー開始なのだ。」

悠「へーいっと……。」

義鷹「本気でやる気ねぇな」

悠「摩耶は心の安定剤だからな」

亘理『私がいるぢゃんかよぉー!』

千世子「東京の王子稲荷神社には、定期的に狐火が見られるという伝承があったのだ。稲荷神社とは、神社の中でも「狐は神の使いである」という信仰を持つ神社なのだ。王子稲荷は関東の稲荷神社の頭領でありれ、関東一円の狐を統べるともいわれたのだ。」

なのは「じゃあ、揺光さんもそうなんですか?」

揺光【妾は誰の下にも就かんし、配下も自分で手塩にかけ一から育てたし……ある意味、唯我独尊じゃ】

千世子「毎年大みそかの晩になると、狐たちは王子稲荷に参詣し、官位を授けてもらうのだ。当時稲荷神社の周囲は一面の田畑であり、その中に一本の榎の大木があったのだ。狐たちはこの木の下で衣装を整え、稲荷神社に参拝するのだ。」

義鷹「お前さ携帯で連絡取り合ったりしないのか?」

悠「携帯は無くしたら困るからあまり持ち歩かないようにしてる。」

亘理『携帯電話の存在を否定してるね』

悠「話したかったら直接会えばいいんだよ」

義鷹「そりゃそうだが」

千世子「このとき、大勢の狐が火を灯して田畑に提灯行列を作る様は、他では見られない壮観な光景だったと伝えられているのだ。土地の者はその火を数えることによって、翌年の農作の豊凶を占ったそうなのだ。」

神姫「持ってるのと持ってないのだと不便性が違うでしょ。それを理解できてない時点で頭がおかしいのよ」

悠「ざっくり切りつけてくれるよね」

神姫「一般論をいってるだけ。それに余計な機能をいじらないで、電話受けかけだけしてたらいいのよ。」

悠「ウール……あ、間違えた。うーむ、よわったな。完全な正論だ。」

義鷹「ちゃんと携帯したらいいだけの話しだろ。」

悠「ですよねー。」

千世子「この狐火はとても有名な物で、歌川広重の浮世絵「名所江戸百景」にも描かれているのだ。」

義鷹「そういえば、お前と番号交換してなかったな」

悠「義鷹、携帯持ってんだ。じゃ、番号いうからワンコしてくれ」

義鷹「ワンコ?」

悠「ワンコール、ワン切りの事だよ」

神姫「ギャル語キモ……」

悠「夢のがうつったか……。」

千世子「今では狐が衣装を整えたと伝わる榎の木も道路拡張の際に切り倒され、この伝説に由来した装束稲荷神社と「装束榎」という碑が残るだけだが、平成五年より「狐行列」と呼ばれる祭りも行われているのだ。大みそかの晩に、狐面に、裃姿の人々が、王子の狐たちに習って装束神社から王子神社までの道のりを練り歩くのだ。今日のじゅぎょーはここまでなのだ。」
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