ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(12/7/夜)ー

夜の授業が始まる前、ミニホームルームが開かれていた。

悠「えーとだ、神姫はちょっと人と話すのがアレだから……本人に直接話さず俺を一度通して…痛!」

神姫は見えない空気の弾、かなり弱い弾針勁を悠にぶつけた。

神姫「私は可哀想な人か、変なこというな!」

悠「痛っ…摩耶達の安全のためだよ」

千世子「喧嘩はダメなのだ!はい、仲直りのあくしゅ。」

千世子は神姫と悠の手をつかんで近づける。

悠「……」
ギュッ…
神姫「……」

千世子「うん、よろしい。じゃあー、じゅぎょーを始めるな。今日は聖ゲオルギウスのドラゴンが登場する黄金伝説とはなにか?テレビ番組じゃないぞ!」

摩耶「む、先にいわれちゃった」

神姫「黄金伝説は、キリスト教の聖人の伝説をまとめた本でしょ。」

千世子「大正解。もともと聖ゲオルギウスによるドラゴン退治の伝承は昔から有名だった。この伝説をさらに広めることに一役かったのが黄金伝説という本なのだ。黄金伝説の人気はすさまじく聖書に次いで多くのキリスト教徒に読まれた本だという。」

摩耶「はーい、ちょこ先生、なんで黄金伝説なんですか?」

神姫「そういえば…別に金塊とかは出ないわよね」

悠「それは…」

千世子「それはだなー。この黄金伝説という名前は、作者……あ、この本は13世紀ごろ、イタリアの大司教「ヤコブスデウォラギネ」が執筆したんだ。そのヤコブスデウォラギネがつけたんじゃなく、同世代の読者たちにつけられたタイトルなんだ。」

摩耶「本当のタイトルは?」

悠「「ReadingsofTHEsaints」日本語に訳すなら「聖者読本」という感じかな。」

千世子「千世子がせんせーなーの!あんちんはせいとー!」

悠「はい…」

神姫「空気読みなさいよ」

悠「神姫に言われるとは…」

神姫「私は読まなくていいのむしろ空気が私にあわせるべきなのよ」

摩耶「わぁ…すごい自信」

千世子「私語もだめー!この本はキリスト教徒にとって「黄金」の美称をつけるほど素晴らしいものだったのでこの名前がつけられ、現在では本来の書名よりも黄金伝説の方が有名になってしまったのだ。さっきも神姫がいってたように、本の内容は金属の黄金とは全く関係がない。」

摩耶「なるほど。それで黄金伝説かぁ。ためになるね」

悠「ためにはならんだろ…」

千世子「黄金伝説には、ほかにもキリスト教の信者がドラゴンを退治するはなしがある。たとえば信仰の力だけで竜を退治した聖マルガリータや、人を襲いつづけたタラスクスを、十字架だけでしずめた聖マルタの話とかなのだ。はい、今日はここまで。」

悠「よし、おつかれ。」

摩耶「悠くん、ごはん食べて帰ろうよ」

悠「いいな。神姫…居ないし」
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