ー奇談ー學校へ行こう3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「それじゃ、じゅぎょー始めるのだ。」

【青行橙】
百物語のマスコットキャラ

悠「義鷹~。」

義鷹「なんだ?」

悠「生肉食う?」

義鷹「喰う」

悠「ほれ。」

義鷹「いい肉じゃん。どーしたんだ?がしゅ、がしゅ……。」

悠「……」

義鷹「ぁん?」

悠「いや、牛肉喰ったらウシのパーツ増えたりしないかとちょっとした興味本位だった。」

義鷹「あのなぁ……ウシ何かとっくに何頭も食ってるから既にパーツになってるよ」

悠「あー……そうかぁ。なるほどなぁ。ちなみに猫にもなれるか?」

義鷹「得物を探すときは猫の耳を生やすし、場合によっては牛にも犬でも変化出来る。」

悠「いいな。なんか楽しそうで」

義鷹「なってみるか?」

千世子「妖怪や幽霊のことを語る「怪談」の方法の一つに「百物語」と呼ばれるものがあるのだ。これは月の暗い夜に、行燈という江戸時代のランプに百本の芯を取り付けて点火し、怪談が一話終わるごとに、一本ずつ火を消していくものなのだ。」

要「悠が妖怪になるか誘われてるな」

摩耶「心配しなくてもいいよ」

要「心配は爪の先ほどもしてない」

摩耶「あはは。」

千世子「百物語をすべて火を吹き消すと、かならず何か怪しい事や変わった事が起こると信じられていたのだ。百話目の怪談が終わるのを待たず、百話目の途中に怪奇現象が起きるという説もあるのだ。」

義鷹「そうだ。肉の礼って訳じゃないが……」

悠「何かくれるの?」

義鷹「仕事やらせてやる。」

悠「……何の嫌がらせでせうか?」

義鷹「お前池袋方面には土地勘あるんだろ。ちょっと行ってきてくれよ。お前の目なら見つかるはずだし」

悠「何を見つけるんだ…?」

義鷹「札……いや、紙だ。」

千世子「妖怪「青行燈」は、百物語によって起こるという怪奇現象のひとつなのだ。青行燈は絵画などでは、黒く長い髪と角を持ち、歯を黒く塗り、白い着物を着た女性として描かれているのだ。だが、この青行燈が出現したとき何をするかは解らないのだ」

悠「紙?」

義鷹「あぁ、紙なのは確かだ。ただ、絵なのか札なのか、何かは解らない。それをお前に見つけてきてほしい。報酬は……二百万」

悠「乗った……っと、言いたいが怪しすぎる」

義鷹「ひゃはっ。大丈夫、危ない目にはあわねぇよ。」

千世子「じつはこの青行燈、江戸時代の浮世絵師「鳥山石燕」によって描かれた妖怪画集「今昔百鬼拾遺」に登場する、鳥山石燕オリジナル妖怪なのだ。」

悠「詳しい場所は?」

義鷹「ここら辺だ。解るか?」

悠「ここから近いな……はて、ここって墓場じゃ無かったか?」

義鷹「ひゃはっ!」

悠「おい……墓荒らしなんかはしないぞ。」

義鷹「墓の下には無いはずだ。」

悠「……」

千世子「百物語は江戸時代にかけて庶民の間で盛んに行われていたのだが、百物語りの終わりに青行燈が現れたという体験談は、記録にはほとんど残っていないのだ。この妖怪が青行燈と呼ばれる理由は、百物語の作法にあると思われるのだ。百物語では、普通風よけのために行燈に張られている白い和紙の代わりに、青い和紙を張って、行燈の明かりを青色にするのだ。以上、青行燈のじゅぎょーだったのだ。」

悠「本当に危ない事はないんだな?」

義鷹「無いはずだ。」

悠「ハズかよ…。」
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