ｰ教室ｰ

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ちぇき。」

義鷹「おう。将棋するか」

悠「よし来たこい。」

美兎「アンタらの将棋もほぼ日課になってきてるわね」

義鷹「コイツを倒さんと冥にも狐にも勝てねェしな」

悠「おれってその二人より下の位置づけなんだな。」

千世子「皆きてるのだな。」

冥「いるのナ」

亘理『あれ、今日は冥ちんもいるんだ。』

冥「いるのニャ」

千世子「」それじゃ、はじめるのだ。昨日は山姥は人を襲う妖怪といったけど、全部の山姥がひとを襲う訳じゃないのだ。」

義鷹「そうだ。昨日、結局どうなった?」

悠「なにが?」

義鷹「あの女と」

悠「……ビンタじゃなく、久々に肘だったよ。」

義鷹「ご愁傷さまだな」

千世子「むしろ人間と仲が良かったり、人間の役に立つ山姥の伝承も多いのだ。ある民話では、山姥が村里に来て、糸をつむぐを手伝ったと伝わっているし、山姥が支払ったお金には福があるというのだ。このように、山姥は人々に慕われる存在でもあったのだ。」

摩耶「二面性って奴かな」

要「ジキルとハイドみたいな感じか」

摩耶「いるよね。一方では慕われて、一方では恐れられてるひとって」

揺光【大抵の場合は勝手に迫害し、勝手に怖れ、勝手に奉るばあいがあるがのう。鬼なんかそうじゃろ鬼神と一方では神、一方では邪悪な存在。】

千世子「人間に慕われる山姥の代表は、長野県の北西、北安曇(きたあづみ)郡にある大姥山に住むという山姥なのだ。この山姥は、なんし「山姥神社」という神社に、神として祀られているのだ。」

摩耶「あ、いったとおりだね」

揺光【おー、偶然じゃ。】

雨「胡散臭さい狐」

揺光【……】
ジジジ……

雨「熱!熱い!!熱いぃ!!!」

冥「多大な火気は厳禁ナ!!」

揺光【建物は燃えんから安心せい。蜘蛛の死骸だけじゃ】

千世子「はーい、ちゃんと聞いてくださいのだ。「山姥」という妖怪が生まれた理由はいくつか説があるのだ。第一の節は、山姥はもともと山の神に仕える巫女、もしくは山の神そのものだったというものなのだ。」

義鷹「なにやってんだあいつ等」

悠「雨が揺光にいらんこといったんじゃないか?」

美兎「蜘蛛の焼死体とか嫌よ」

千世子「かつて日本には、山を神聖な物として崇める「山岳信仰」という風習があったのだ。そして山の神の祭りでは、女性を山に登らせるという儀式を行う地方があったというのだ。」

悠「女と山に登るのはいいな」

義鷹「なんか、想いででもあるのか」

悠「いい女とひと時のアバンチュールを過ごした事がな」

亘理『どーいうこと!!聞いてないよ!』

悠「ぐはっ……耳もとでハウリングっ……?!」

千世子「けど、時代がすすむと山の神への信仰が薄れて、山に送られた巫女や山の神そのものが妖怪に変わったという物なのだ。今日はここまで、続きは明日なのだ。」

亘理『なに!どーいう、女? 』

悠「なんでもないから耳もとで叫ぶのは止めてくれ……」

亘理『なんでもないことなーーーーい!!』

悠「義鷹……。」

義鷹「俺はもう打ったぞ」

悠「えぇ…」