ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(12/4/夜)ー

千世子はうきうきと廊下を歩いていた。

千世子「あんちんとまーや来てるかな~♪千世子が先かな~♪」

ガラリと音を立ててドアを開くと、悠と摩耶…それと見知らぬ女性がいた。

悠「あ、ほら、ちょこ来ただろ。」

神姫「へぇ…あの娘が先生なの。」

千世子「ひっ…」

千世子は神姫を大きくホーミングして悠の背中に隠れた

神姫「?」

悠「三白眼で見下ろされたら怖いだろ」

神姫「あぁ…そう。よいしょ」

神姫は腰を屈めて千世子と目の高さをあわせた。

千世子「ひっ…」

神姫「そこまで、怯えないでよ…。はぁ、こんばんわ」

千世子「こ、こんばんわ…」

神姫「私は九頭竜神姫。悠の知り合いっていうよりご主人様かしら。」

摩耶「悠くん…そんな趣味が。」

悠「摩耶、やめてくれ。」

摩耶「あはっ♪」

神姫「ちょっと黙っててくれない?私は今この娘と話をしてるの」

悠「うい…」
摩耶「はーい」

神姫「それで、悠がいつも夜に用事があるって消えてるから何してるのかってちょっと着いてきただけ。驚かしてごめんなさい。それじゃあ、私は帰るわ。」

神姫は微笑んで立ち上がり教室から出ていく。

摩耶「なにか迫力あるね。」

悠「最強の部類に入る女だからな。」

千世子「め、目付きが怖かったのだ」

悠「そうだな。けど悪い奴じゃないんだ。もし、また会ったら怯えないでやってくれ」

千世子「うん…」

摩耶「あの人って悠くんのコレ?」

摩耶は可愛らしい小指を立てた。
悠は黙ってそれを握って拳に戻す。

悠「知り合い以上、友だち未満だよ。」

千世子「じゃあ…ヒュドラの最後の授業をします。」

摩耶「昨日はヘラクレスが一騎討ちじゃ勝てないってところだったよね。」

悠「それで従者に助けを求めた。」

千世子「うむ!ヘラクレスの従者は妙案を実行に移す。彼は手に持っていた松明で、ヘラクレスが棍棒で叩きつぶした傷口を焼いたのだ。すると焼けただれた傷口からは新しい首が再生せず、ヘラクレスは次々とヒュドラの首を減らしていくことができた。だが最後に残った不死身の首だけは倒せなかったので、ヘラクレスはヒュドラを地中に埋め、その上から巨大な岩を乗せて封印することにしたのだ。」

摩耶「孫悟空みたいだね」

悠「釈迦によって封印だけどな。」

千世子「ヘラクレスはギリシャ神話に登場する人間の中でも最強クラスの戦闘力を持つ英雄で、彼が仲間の手を借りて戦ったのは後にも先にもヒュドラだけだ。そういう意味では、ヒュドラはヘラクレスをもっとも苦しめた怪物だったと言えるだろう。はい、これでヒュドラの授業は終わります。明日からは「聖ゲオルギウスのドラゴン」の授業です」

摩耶「はいはーい、ちょこせんせー。質問です。結局ヒュドラはドラゴン?蛇?」

千世子「うむ、それはだな。時代がくだり、ヨーロッパにキリスト教が広まると、ヒュドラはキリスト教の聖書に出てくる「黙示録の赤い竜」と混同されるようになる。つまり、ヒュドラは「蛇」ではなく「竜」と認識されるようになったのだ。ドラゴンとしてのヒュドラは9つの首と二本の足をもち、翼がはえた姿で描かれるけとが多い。そして世界の終わりには黙示録の赤い竜と同じように、天使ミカエルと戦うという。」

悠「たしか、16世紀スイスの博物学者「コンラート・ゲスナー」の著書「動物誌」にはドラゴン型のヒュドラのイラストが載ってたな」
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