ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(12/3/夜)ー

夜の校舎で今日も授業が始まろうとしていた。
千世子は黒板に「ヒュドラ」と書いてから点呼をとりはじめる。

千世子「悠のあんちん。」

悠「はいよ。」

千世子「まーや」

摩耶「はーい。」

千世子「うん、うん。それじゃ授業をはじめまーす。昨日に引き続いてヒュドラの勉強です。はい、まーやヒュドラの能力はなんだ?」

摩耶「はい、悠くんと同じ超再生能力です」

悠「誰が超再生能力もってんだ。」

摩耶「あ、ごめん。再生じゃなくて不死の方だっけ?」

悠「どっちもヒュドラの能力だよ!」

千世子は矢印のついた棒でペシペシと悠と摩耶の頭を叩いた。
よく伸びる棒だ。

千世子「私語しなあーい!異常な再生能力よりもさらに恐ろしいのが、ヒュドラが持つ猛毒である。とくに血液の毒性は高く、肌に触れただけで死をもたらす強力なものだ。ギリシャ神話には不死の能力を持つ超人が登場するが、そのなかにはヒュドラの毒を受けた苦しみのあまり不死の能力を返上し、死を選んだものもいるというから恐ろしい。」

悠「永遠に死に続けるのは怖すぎだよな。」

摩耶「だよね。僕は永遠に死なないってだけでも怖いけどね。」

千世子「古代ヨーロッパでは、ヒュドラは実在の怪物だと信じられていた。たとえば1500年ほど前には、フランスの国王が600枚の金貨でヒュドラの標本を買ったという記録が残っている。ヒュドラの標本に関する話はほかにもあるが、もちろんヒュドラが実在するわけではないので、これらの標本はほかの生物の体を加工して作ったか、奇形の蛇を標本化したものと思われる」

摩耶「日本にもたしかそーいうのあったよね?」

悠「万博中のマーメイド像とかカッパの標本とかな。」

千世子「ヒュドラを現在でも有名な怪物としている原動力は、ギリシャ神話の英雄であるヘラクレスとの戦い。ヘラクレスは数多くの英雄が登場するギリシャ神話のなかでも代表的な人物なのだ。」

摩耶「たしか…12の困難な使命を達成する伝説のお話だったよね?」

悠「あぁ、ちなみにヘラクレスのヒュドラ退治は12番目まである使命のうち2番目の使命だ。」

千世子「ヘラクレスはヒュドラの吐く毒の息を吸わないように、口と鼻を布で覆って戦った。だがヒュドラの驚異はヘラクレスの予想を上回っていた。ヘラクレスが棍棒をふるってヒュドラの首を叩き潰しても、潰れた跡から二本の首が生え、どんどん首の数を増やしていったのである。これには無敵を誇るヘラクレスも苦しみ、一騎討ちをやめて従者に助けを求めた。……今日はここまで続きは明日にするぞ。」

悠「ん~はぁ~…お疲れさん。なんか腹減ったな」

摩耶「帰りに何か食べていこうか」

千世子「あんちん、あんちん。」

悠「あー?」

千世子「あんちん、あんちん。」

悠「ん?」

千世子「あんちんは不死なのか?」

悠「んな訳あるか。」
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