ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(12/1/夜)ー


夜の八時が少し回った今日、廊下を走る音が教室の前で止まってドアが勢いよく開いた。

千世子「悠のあんちん遅刻なのだ!」

悠「はぁはぁ、わ、悪い。遅れた。」

摩耶「何かしてたの?」

悠「ちょっとな…はあぁ…疲れたぁ」

千世子「あんちん…お疲れか?」

悠「少しだけな。けど、ぴよこのせいじゃないから。気にはしなくていいぞ」

千世子「うん」

摩耶「あれ?スンスン…スンスン…」

悠「な、なんだよ。汗くさいか?」

摩耶「ううん、悠くんの匂いだよ」

悠「なんか恥ずかしいな…」

摩耶「けど、それに混じって女の人の匂いがしてるような…」

悠「ちょ、怖いよ。」

摩耶「あれ、もしかして正解?」

悠「かま賭けやがったのか…」

摩耶「あはは」

悠「……」

千世子「授業…」

悠「あー、ごめんごめん。始めてくれ。」


千世子「こほん、今日は「黙示録の赤い竜」の最後のまとめ。頭が七つある意味はなのだ。黙示録の赤い竜が登場する「ヨハネの黙示録」は、キリストの死後から70~100年後、1世紀の後半に書かれたと考えられている。このころキリスト教はヨーロッパに進出をはじめたが、ヨーロッパやイスラエルを支配するローマ帝国に迫害を受け、地下の墓地などで秘密教団のように活動していた時期もあった。」

摩耶「それが黙示録の赤い竜となにか関係するの?」

悠「あぁ、七つの頭に十の角を持つって部分がな」

千世子「うむ、悠のあんちんのいうとおり、その外見はローマ帝国と密接に関係している。七つの頭は、ローマ帝国を支配してきた七人の皇帝を意味する。そして十の角とは、西暦68年にローマ帝国で内乱が起きたときに乱立した11人の皇帝のうち、正当な皇帝であったガルバ帝をのぞく10人をあらわしているのだ。」

千世子は黒板に簡単な年表を書き表す。
摩耶はそれをちゃんと書き写しながらいった。

摩耶「なるほど、キリスト教徒はローマ帝国の支配を嫌っていたもんね。歴史で習ったよ」

悠「けど、批判すれば罪は免れないだろ?」

千世子「そう。だから彼らは支配者への批判を竜の姿に封じ込め、聖典として語り継いだのだ。」

摩耶「竜も大変だね」

悠「そうだな…竜を相手にするのも大変だけどな。」

摩耶「え?」

悠「うんにゃなんでもない。」

千世子「それじゃあ、「黙示録の赤い竜」についてはここまでです。明日からは「ベオウルフのドラゴン」の授業にかわります。起立、礼。」

悠と摩耶は立ち上がって、お辞儀をした。

千世子「あんちんは遅刻したので、千世子をなでなでするの!」

悠「撫でるくらいならいくらでもしてやるよ。おいで」

ナデナデ…ナデナデ…

千世子「むっ…ふぁ…」

摩耶「ときどき、悠くんの行動がやらしく見えるのが不思議だよね」

悠「失礼なやつだ。」

摩耶「ちょこちゃん、ヨダレ、ヨダレ」

千世子「む!む~ゴシゴシ」

悠「おいおい、白衣の袖でなするなよ…」
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