ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(5/5/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

摩耶「ね、ね、結局さ悠くんがアスタロトが好きなのは黒い服を着て、口の端から血を流す残忍な美女だから?」

悠「そうだよ」

摩耶「S好きなんだから」

花描「あ、Mだったんだ」

悠「いや、MとかSというか……矯正のしがいがありそうなほうが燃える」

花描「あぶねえ、この男、相当危ない。」

悠「おれは大人しすぎる女にはさして興味ない。最初からいうことをきく人なんて面白くもなんともない」

摩耶「なんだろうね。悠くんの屈折した愛情」

神姫「病気でしょ。」

千世子「なんだか大人な話をしてるけど、じゅぎょー開始なのだ。アスタロトという悪魔ができた経緯は、大きくわけて二段階あるのだ。一段階目は、現在のシリアにあたるカナン地方で信仰されていた「アスタルテ」という女神が、ユダヤ教徒によって悪魔化された、というものなのだ」

花描「ちなみにピエロ君からみて神姫はどんな感じだ?」

悠「キツいちゃキツいが……癖になるな」

神姫「私も投げがいがあって気に入ってるわよ」

摩耶「ある意味、いい関係だね。」

千世子「旧約聖書のひとつである「土師記」によれば、アスタルテはユダヤ人にも信仰されていたようなのだ。ユダヤ教の神であるヤハウェが、アスタルテを信仰するユダヤ人を叱った記述が残っているのだ。」

悠「まぁ、一応見合いした仲だしな」

神姫「アレはお見合いといえるのかしら…」

千世子「同じく旧約聖書のひとつ「列王記」には、女神アスタルテが弾圧されていく過程が書かれているのだ。列王記上巻では「女神」と記述されていたアスタルテだが、下巻では「憎むべきものアスタルテ」と変わり、ユダヤ人指導者のひとり「ヨシュア」によって、徹底的に宗教弾圧されたのだ。」

摩耶「お見合いして、なんで下僕になっちゃったの?」

悠「下僕になってないぞ!?」

神姫「小間使いよ」

花描「似たようなもんだな」

千世子「時代が進み、キリスト教が誕生すると、今度は「アスタルテ」の原型である性愛の女神「イシュタル」が邪神とみなされたのだ。その理由は大きく分けてふたつあるのだ。はい、さっきから話してばかりのあんちん」

悠「ひとつは、キリスト教は唯一神しか認めない一神教だったのと、キリスト教はむやみな性行為を禁じてたから、神殿で性交を行うっていう信仰スタイルをもつイシュタルは、汚らわしい淫らな存在だとされてたから」

千世子「ぬぬっ…さすがあんちんなのだ。今日はここまでなのだ」
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