ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(4/25/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

千世子「さぁ、今日も元気にじゅぎょー開始なのだ。」

摩耶「チョコちゃんはいつも元気一杯だね。」

千世子「ばっちり元気なのだ。夜は千世子の…魔族の時間なのだ。」

悠「だったらここにいる全員魔族になっちまうぞ」

神姫「……どういう…意味?」

悠「さぁさぁ、ぴよこ先生じゅぎょーを開始してくだせぇ」

神姫「……怪死にしてやろうかしら。」

花描「上手いな」

千世子「ベルフェゴールは、現在のヨルダン地域にあった王国「モアブ王国」の、豊穣と性の神「バアル=ペオル」をもとに作られた悪魔だというのだ。」

悠「豊穣と性って…めっさ生々しいな。種が…」

神姫「黙りなさい。」

悠「イエス・ユア・ハイネス」

千世子「バアル=ペオルはユダヤ人にとって異教の神だが、一時期、イスラエル人の中にもこの神を信仰する者がいたことが旧約聖書に記されているのだ。」

摩耶「異教の神で邪神扱いされてないんだね。」

千世子「ベルフェゴールの名前の意味には諸説あるのだ。もっとも信憑性の高いものは「フェゴール山の王」というものなのだ。これは前身である「バアル=ペオル」とまたたく同じ意味なのだ。バアルとは王と」いう意味であり、フェゴールは「ペオル」がなまったものだと考えられているのだ。」

花描「他に名前の意味はないのか?」

千世子「「好機の神」や「始まりの王」、「裂け目」などという説があるのだ。この「裂け目」という説は、人々がベルフェゴールを洞窟内で崇拝したり、地下室の通気口から供物を投げ込んだりしたことからきているのだ。ベルフェゴールが常に口をあけているのは、投げ込まれる供物を受けとるためなのだ。」

神姫「怠惰ね…。口で受けとるとかないわ。」

千世子「ベルフェゴールの名前は慣用句にもなっているのだ。「ベルフェゴールの探求」という言葉がそれで、不可能な計画を皮肉る言葉として使われるのだ。」

摩耶「それ面白いね。」

悠「たしか中世ヨーロッパで語り継がれた物語が元になってるんだっけか?」

千世子「あるとき、地獄の悪魔たちの間で「真に幸福な結婚は存在するか?」という議論が起きたのだ。この論争には結局結論が出ず、悪魔たちは真偽を確かめるため、ひとりの悪魔を人間界に送り込むことにするのだ。」

神姫「幸福な結婚なんか存在しないわよ。」

悠「結婚は人生の墓場か…。だけど、おれは存在すると信じたい……ハーレムのために。」

摩耶「色々台無し」

千世子「このとき選ばれたのがベルフェゴールだったのだ。人間の姿に変身したベルフェゴールは、数多くの夫婦の新婚生活を観察したのだ。最終的に彼は「幸福な結婚など、根も葉もない話である」という結論を出したのだ。ベルフェゴールは結局「真に幸福な結婚」を見つけ出すことが出来なかったのだ。」

悠「幸福な結婚など無いのだから、探しても無駄。これが転じて「ベルフェゴールの探求」は実現するはずがない計画を馬鹿にする言葉になったんだな。」

千世子「さらに、ベルフェゴールという言葉は「人間嫌い(女性嫌い)」という意味を持つようになったのだ。以上ベルフェゴールのじゅぎょーだったのだ」
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