ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(4/22/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

花描「生きてたんだな。」

悠「勝手に殺すな。……殺されかけたけど。」

神姫「落とさないであげたじゃない」

悠「その代わりスリーパーホールドかましたよな!?」

神姫「私に絞められるなんて光栄に想いなさいよ」

悠「んな、アホな…」

千世子「じゃ、じゅぎょー開始なのだ。旧約聖書に収録されている宗教文書「トビト書」には、アスモデウスが女性に取り憑き、次々と殺していくという残酷な事件が描かれているのだ」

摩耶「スリーパーホールドで落ちなかったの?」

悠「意識は確かに飛びかけたが背中に当たる柔らかい物に集中してな」

神姫「やっぱりクレイジーフォールダウンさせようかしら…」

千世子「アスモデウスに取り憑かれた女性は、結婚初夜のたびに必ず夫が死んでしまうのだ。それが七回も続いたため「この女は悪魔に魅入られている」と、周りの人間から怖がられるようになったのだ。」

悠「日本風にいうと悪魔に魅入られた花嫁殺人事件!だな」

神姫「まんまじゃない」

摩耶「バーローアニメ?」

悠「いや、金田一かな」

千世子「ある日、ある若者とその友人が、女性の住む街を訪れるのだ。友人は若者に女性と結婚するように勧める。女性の噂を知っていた若者は嫌がるが、友人は秘策を授けるからといったため、友人を信じて承諾したのだ。」

神姫「馬鹿?」

悠「友人を信じてなにがわるい?」

神姫「私に…それを聞く?」

悠「お口チャックノリス」

千世子「友人の秘策とは「魚の内臓を香炉にいれて燻す」ことだったのだ。若者は友人のいうとおり、女性との初夜の晩、部屋の隅にその香炉を置いたのだ。燻された魚の臭いが部屋に充満すると、その臭いを嫌ったアスモデウスは部屋から逃げ出してしまったのだ。」

花描「初夜でそんなことされたら女も逃げ出す気がするけどな」

摩耶「鼻つまってたんじゃない?」

悠「すごいレベルの鼻つまりだな…」

千世子「若者と友人は、ただちにアスモデウスを追いかけるのだ。じつはこの「友人」はそもそも人間ではなく、神の命令で女性を救いに来た天使「ラファエル」だったのだ。アスモデウスはエジプトまで逃げるけど、結局そこでラファエルに縛り上げられ、幽閉されてしまったというのだ」

神姫「エジプトまで追いかけたのもたいした根性よね。」

千世子「「トビト書」で描かれたアスモデウスの姿は悪魔学者から重要視され、アスモデウスだけでなく、中世以降の一般的な悪魔像になったのだ。」

悠「そういえば作家ミルトンは「トビト書」でアスモデウスがラファエルに捕まることのオマージュとして、自分の作品「失楽園」でアスモデウスとラファエルを一騎討ちさせてたな」

千世子「じゃ、今日はここまでなのだ。」
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