ｰ教室ｰ

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「暑くなってまいりましたなぁ。そのせいか……蚊がいる。」

プンッ、プンッ……

摩耶「居るねぇ。というか、音はしてるけど何か捕えられないんだよね。」

神姫「殺虫剤は?」

千世子「雨ちゃんが苦しむからダメなのだ。」

悠「蜘蛛なんだから蚊を捕えろよ」

雨「うっさいわねぇ…。捕獲しろったってそこら中に糸をはれっての?」

千世子「亘理ちゃんが絡まりそうなのだ。」

亘理『ひぇっ』

悠「糸を伸ばせば!ストーンフリーっ!」

摩耶「ぐるぐる巻きにしてブン殴る奴だね。」

亘理『殴られるの私?!』

悠「酷いやつだなぁ。」

雨「なんで私が悪人みたいになってる。お前を糸で巻いてやろうか!」

悠「……」
スッ

雨「殺虫剤を構えるな!」

神姫「なんでもいいけど、蚊に向けて吹いてくれない?」

雨「やめて!」

摩耶「っていうかね。さっきから気になってたんだけど……」

悠「どした?」

摩耶「蚊をさ目で追っていってるんだけど……消えるんだよね。」

悠「消える?」

摩耶「端的に言うと……ワープしてるっぽいよ。」

神姫「ワープって……」

蚊『……』
プンッ

悠「あ、ほんとだ消えた」

千世子「言われてみればプ～ンって羽音じゃなくてプンッて切れてるのだ。」

亘理『え、なにそれ怖い』

悠「ちょっと待て、もしかしたら時間を消し飛ばしてるのかもしれない。血をたらして判断しないと」

神姫「鼻っ柱でも殴ってあげようか?」

悠「いや、鼻血での判定はちょっと……」

摩耶「特殊な蚊が発生してるのかな」

悠「どっちにしろ刺されたくないな。殺虫剤を振りまくから……雨、ガスマスクでもつけとけ」

雨「んなもんないわ!」

悠「じゃあ、ブラジャーでも顔に当てとけ」

亘理『それ効果あるの?!』

悠「イグノーベル賞をとったやつならな」

千世子「いぐ?」

神姫「「人を笑わせ、考えさせてくれる研究」に対して毎年贈られる賞が「イグノーベル賞」よ。」

悠「そこでガスマスクになるブラジャーが実際に開発されて販売されてる。胸を支えるカップが有害な浮遊粒子を遮断するマスクになる。有事の際にはブラジャーを分離し、2人分のマスクを確保可能。さらに前留め部分には放射線の簡易測定センサーが付いてて、マスクを利用すべきかの判断に役立てられる。」

千世子「えー、スゴイのだ。」

蚊『……』
プンッ

神姫「もう、うっとおしいわ」
パンッ!

悠「おー、ワープ先を完全に読み切って叩き潰した。」