ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(4/19/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

摩耶「ここから見ると外って暗いよね。」

花描「ビルに隠れて、街の光が入らないからな。」

神姫「それにしてもここに来るまでの道のりは暗すぎるわね。電灯くらい欲しいわ。」

悠「懐中電灯装備しといたらどうだ?」

神姫「荷物になるわよ」

悠「なら、心眼だな」

神姫「ひとりで勝手に開眼してないよ」

千世子「それじゃ、今日のじゅぎょーを始めるのだ!」

神姫「ベルゼブブの続きよね」

千世子「ベルゼブブは、もともと中近東カナン地方の豊穣神「バアル=ゼブル」だったのだ。」

花描「秋姉妹か?」

悠「あの神は神でも底辺だな」

摩耶「なにげに酷いね。」

千世子「この神は、ユダヤ人が住むイスラエル近辺の国で広く信仰されており、ユダヤ教の神であるヤハウェにとって最大のライバルだったのだ。このため、ユダヤ教徒はバアル=ゼブルの権威をおとしめるために様々な工夫をしたのだ。」
花描「ユダヤ教徒はやること小さいな」

千世子「旧約聖書に収録されているユダヤ人の歴史書「列王記」には、イスラエルの王でありながらバアル=ゼブル信仰を許したアハブ王が変死したりしたなのだ。信者450名の祈りをバアル=ゼブルが無視したり、神ヤハウェがバアル信者を根絶やしにするよう指示している記述が見受けられるのだ。」

神姫「そこまでするともはや執念よね」

悠「坊主憎ければ袈裟までだな」

千世子「その後、ユダヤの魔術書「ソロモンの誓約書」で、バアル=ゼブルはついに名前まで歪められることになるのだ。バアル=ゼブルには「高き館の主」という意味があるのだ。これがユダヤ教徒によって、発音の似たバアル=ゼブ「ブ」という読みに変えられてしまったのだ。この新しい名前には「蝿の王」という意味があるのだ。」

悠「虎狗琥崇には王様の称号がつくのだ」

摩耶「だいぶ意味が変わるけどね」

千世子「この呼び名が選ばれた理由はいくつかあるのだ。有力なものは……バアル=ゼブルという呼び名は「ソロモンの誓約書」の主人公、イスラエル王ソロモンのことだと勘違いしやすいのだ。そこで名前の変更が必要になり、音の似ている「ゼブブ(蝿)」を新しい名前にしたという説なのだ。もちろん、伝染病を媒介する蝿の名を付けて、敵をおとしめる意図があったことはいうまでもないのだ。」

花描「言葉巧みだな」

千世子「ただし、蝿は生命の再生の象徴ともみなされていたのだ。このため、蝿を信仰対象にする民族の神ということで「蝿の王」という名前が選ばれた可能性も否定はできないのだ。今日はここまで続きは次回なのだ」
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