ー奇談ー學校へ行こう(2)6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「だれだぁー。おれの椅子の上に内臓っぽい物をたれ落してる奴は」

亘理『なにそれ怖い』

累「内臓じゃないわ。塩辛よ。」

悠「そして犯人は見つかった。」

累「最低よリリスちゃん!」

リリス「アンタだよ。」

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。トバゾス島で見つかった「トパーズ」は「鉄のやすりで加工できた」という記述が残っているのですが、こうなると問題になるのは、「硬度」なのだ。」

悠「食べ物で遊ぶんじゃねぇ!遊ぶならちゃんと食いきれ!」

摩耶「なんかおかしくない?」

累「はいはい、食べたらいいんでしょ。千味ちゃん飲んで」

千味「累ちゃんのためなら、ずぞ、ずぞぞっ」

悠「……お前の愛の持ち方は間違ってるぞ絶対。」

千世子「鉄のやすりは、モース硬度の指標となる石の代表としてよく使われますが「硬度8」のトパーズは、鉄やすりでは加工できないのだ。トパーズのほうがずっと硬いので、逆にやすりの目がつぶされてしまうのだ。「硬さ」は、その鉱物の持つ固有の性質ですから、「やすりで加工できる石」は、つまり「トパーズではありえない」ということになってしまうのだ。」

摩耶「悠君も引くレベル」

亘理『私も引いてる』

サタン「魔王たる我も引いてるのだ」

累「私も」

リリス「やらせた奴がこれだからね。」

千世子「それでは、この宝石の正体はいったい何だったのでしょうか?その答えは比較的に簡単に検証することができるのだ。話の発端となった「トパゾス島」は、現在はセントジョン島と呼ばれる火山島とされていますが、この島からは、トパーズは採れないのだ。その代わりに豊富に採掘される功績は何か?実は「ペリドット」なのだ。」

千味「うっ、うぶ……はぁはぁ、飲んだよ!」

悠「さっさと便所いって吐いて来い…」

千味「うぷっ!」
ダダダッ

悠「しかも結局椅子は塩辛の液でドロドロだし。洗うしかないな」

神姫「最初から洗いなさいよ」

千世子「例の「硬度」の問題も、ペリドットの黄土は6.5度で、トパーズよりずっと柔らかいもの。鉄やすりで十分に加工できる硬さで、記述とも一致しているのだ。」

悠「だってすするとは思わなかったんだもん」

累「ほんとにね。」

リリス「やらせたのはアンタだよね。」

サタン「悪魔より悪魔みたいなのだ」

累「もっと褒めて♪」

千世子「まとめてみると、トパゾス島からやってきた「トパーズ」と呼ばれていた石は、実は「ペリドット」で、やがて「現在のトパーズ」と混用されることになった。そして、その二つの石を区別することになった時に、「トパゾス島からきた宝石」と「同じ種類ではない」宝石のほうを「トパーズ」と呼ぶことにしたのだ。そのため、結果として「トパゾス島の宝石」の仲間たちは「トパーズ」ではなくなってしまった、ということのようなのだ。少々ややっこしいことですが、現在ではこのふたつの宝石は容易に区別することができるので、安心なのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ。」
15/100ページ
スキ