ー奇談ー學校へ行こう(2)5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ギョウザの妖精が見えたことってあるか?」

摩耶「……悠くんがおかしなこと言いだしたよー」

神姫「いつものことじゃない」

摩耶「いつも以上に異常なことを」

亘理『ラップかな?』

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。前回の続きからで最初はいやいやながら手伝っていた燕も、やがて王子の心の優しさに心惹かれ、王子が瞳を失ってからは、彼の方の上で、遠い異国の不思議な風景の話をして心を慰めたり、王子の目の代わりになって街のひと達の様子を調べ、金箔の運び先を定めたりしていたのだ。」

悠「ドロヘドロが遂に完結したんだわ。それで餃子の妖精……正確に言うとギョーザ男がまた出てたから」

神姫「そのギョーザ男が何なのか」

悠「そりゃギョーザだよ」

神姫「……」
ググッ
悠「ボールペンの背で手の甲をゴリゴリするのやめていただきたい。」

千世子「やがて冬がやってきたころ。ただのみすぼらしい像になってしまった王子に、最後の別れのキスをして、燕は王子の足元で死んでしまうのだ。そしてその時、王子の胸の中に在った鉛の心臓も割れて壊れてしまうのだ。酷い姿になってしまった王子の像は引きずりおろされ、溶鉱炉でドロドロに溶かされてしまったのだ。しかし、なぜかその鉛の心臓だけがどうしても溶けず、職人の手でゴミ捨て場に投げ捨てられてしまうのだ。そしてそこには、あの可哀想な燕の亡骸も、打ち捨てられてしまったのだ。」

亘理『ギョーザ男って字面が怪物っぽい』

悠「姿形を説明してやるからイメージしろ。まず普通のギョーザをひとつ」

亘理『ギョーザがひとつ』

悠「そのギョーザを頭にして普通の手足が生えてる。以上」

亘理『やっぱり怪物じゃん!』

千世子「神様は、その王子と燕の姿をすべて見ていたのだ。そしてひとりの天使に、「あの街で最も尊いものを拾っておいで」と命じるのだ。地上に舞い降りた天使は、燕の身体と王子の心臓を拾い上げると神様の前に持っていったのだ。神様はそれを見て大いに満足し、王子と燕を天国へ迎え入れることにしたのだ。」

悠「でも、サイズは小さい。身体の部分含めてギョウザ三つ分ぐらいだ」

摩耶「その三つのうち頭がまるまるギョウザひとつってことだよね。」

悠「そうだな。」

サタン「で、そのギョウザ男は何ができるのだ。」

悠「仕事はギョーザをおいしく食べてもらうことだ」

千世子「物語の中で心に迫るシーンのひとつは、燕が「サファイアの瞳」をつつきだした時なのだ。たとえ貧しく、可哀想な人たちのためだとはいえ、そうすればこの優しい王子は、世界を見ることもできなくなってしまうのだ。そのことを知りつつ、彼の頼みを聞いてあげたツバメの気持ちは、いったいどんなものだったのか?燕が最後まで、王子との友情を守って死んでいったのは、きっとこの時の決意があったからなのだ。「誠実」、「慈愛」、「徳望」。燕と王子の行動こそは、サファイアの象徴する、これらの言葉通りのものであったのかもしれないのだ。以上、サファイアのじゅぎょーだったのだ。」
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