ー奇談ー學校へ行こう(2)5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

メフィスト「アリスはいマスか?」

悠「アリス?おーい、居るか?」

アリス『死んでくれる?』

悠「死にません。そして、メフィのおっさんが用事だとよ。」

アリス『なにかしら?』

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。19世紀の末に活躍した劇作家、オスカー・ワイルド(1854年~1900年)は、数々の名作(戯曲「サロメ」、小説「ドリアングレイの肖像」など)を残していますが、多くの人の心に残っているのは、童話「幸福な王子」なのだ。この悲しくも優しい物語では、サファイアが重要な役割を持って登場しているのだ。」

メフィスト「叔父方から贈り物を預かっていマス。」
ザラザラ

亘理『うわっ、宝石の山!』

神姫「ひとつひとつが規格外に大きいわね。」

悠「あのダイヤひとつで一生遊んで暮らせるんじゃね?」

亘理『マジで?!』

千世子「とある国に、「幸福な王子」と呼ばれる立派な像が立っていたのだ。「無憂宮」と呼ばれる宮殿で、なに不自由なく育てられ、涙と言う者の存在を知らずに、人々からは「幸せな王子」と呼ばれた彼は、その名のままに生きて、その名のままに死んだのだ。」

アリス『うふふ、うふふふっ。キレイ。ありがとうと伝えておいて。』
スゥッ

悠「……あれ、誰からの贈り物だって?」

メフィスト「アリスさんのファンと言えばいいデスかね。悪魔のなかにはアリスさんのシモベになりたい者や媚びを売る者がいるのデスよ。」

悠「はー……本人はそれ知ってるのか?」

メフィスト「知ってマスよ。ただ、アリスさんがそれ意に介スると?」

悠「思えないなぁ。」

千世子「彼は、美しい銅像となって、街の中の、高い円柱の上に祭り上げられたのだ。その前身は金箔で覆われ、腰の剣には大きなルビーを、両方の瞳には、立派なサファイアが埋め込まれたのだ。人々は「幸福の王子」の像を見上げて、誉めたり、うらやましがったり、時にはねたんだりしていたのだ。」

亘理『でも、アリスちゃんて宝石とかもらってどうするの?』

メフィスト「ただのコレクションじゃないデスかね。」

悠「おれもそんな気がする。アレはただ綺麗なものとかお菓子とか服とか、要するに欲が子供だからな。」

雨「欲が子供で宝石を欲しがるの?」

悠「最初にいっただろ綺麗だからだよ。」

千世子「それから何年もたったころ。南の国へ渡る旅の途中の燕が一羽、一夜のねぐらにしようと、幸福な王子の像の足元にとまっていたのだ。さぁ眠ろうかと思ったとき、頭の上に、大粒の水滴が、ぽたりと落ちたのだ。この像は雨除けにもならないのか!と起こって像を見上げたツバメが見た、水滴の正体。それは、王子の像が流す涙だったのだ。王子は、柱の上に祀られて以来、街の人々の様子をその目で見つめてきたのだ。それは、お城の中で幸せに暮らしていた王子には思いもよらない、辛く苦しい、貧しい人々の様子。優しい心の持ち主だった王子には、像になってもその悲しさに耐えられず、そっと涙を流していたのだ。」

亘理『綺麗だから?』

悠「おれがヒマつぶしに作ってたビーズ細工も欲しがって持っていったぐらいだからな。価値云々じゃなくて綺麗だからほしいんだよ。だから例えば宝石で作られてるけど趣味の悪いアクセとかは欲しがらない。」

摩耶「ひとの魂はその中で一番きれいなものなのかな」

神姫「だとしても悠の魂は穢れきってる気がするけど」

悠「あら、辛辣!」

千世子「やがて王子は、燕に頼み込んで、まずは自分の剣のつかにとりつけられたルビーを、病気の子供を抱えたお針子の母親に。両目のサファイアのひとつはね部屋に火の気もなく、寒さに震えて仕事が捗らない、若い劇作家の元へ。もうひとつは、売り物をどぶに落として途方に暮れていた、可哀想なマッチ売りの少女の元へ……。そして最後には全身の金箔を剥がして、町に住む貧しい人々に、すべて分け与えてしまうのだ。今日はここまで続きは次回なのだ。」
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