ー奇談ー學校へ行こう(2)5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「マキ割りダイナミック!」
ガィィン!
ジャック『がっ……』
パカンッ!

摩耶「正確には薪じゃなくてカボチャだけどね。」

神姫「なんでもいいわ。うるさいのが静かになったし」

悠「騒ぎの張本人はどこ行きやがった!!」

義鷹「メフィストならとっくに消えてるぞ」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。現在地表で観察、採取できるかんらん岩は、はるか地中深く(マントル層は、海面下7000メートルあたりから始まっています。)から、地相が折れ曲がったり、地下からの噴出(火山の噴火など)が起こったときに、一緒に飛び出したりして地表に現れたもの、と考えることができるのだ。」

悠「きぃーー!悪魔か!」

義鷹「悪魔だよ。純度100%のな」

摩耶「50%ぐらい変人が入ってるんじゃないかな」

悠「半分飲み込んでるな」

摩耶「悠くんは120%だよ。」

千世子「実際、火山島として有名なハワイ諸島は、宝石としてのペリドットの産地のひとつにもあげられている地域なのだ。かんらん岩を研究することは、我々の住む地球の内部がどのようになっているかを研究するのに、とても役立つのだ。」

悠「照れるぜ」

亘理『変人ていわれてるんだよ?!』

悠「変人ガリレオ、つまりおれは……天才物理学者かつ福山雅治レベルのイケメン!」

神姫「頭のおかしい変人120%でいいかしら?」

悠「辛いシュッ」

千世子「また一方、ペリドットの仲間は宇宙からもやってくるのだ。宇宙から地表に降り注ぐ隕石は、いくつかのグループに分類することができますが、その一つ「石鉄隕石」と呼ばれるものの中に、「パラサイト」と呼ばれる種類のものがあるのだ。」

悠「ああ、そうだ。小説のガリレオシリーズが再始動(リブート)したんだぜ。」

摩耶「そうなの?」

悠「沈黙のパレードって長編だ」

神姫「そういえばハードカバーで出てたわね。」

悠「飛びつくように買っちゃったよ」

千世子「石鉄隕石は石やニッケルなどの金属の合金と「ケイ酸塩鉱物」と呼ばれる成分で出来ているのだ。そして実は、かんらん石もまた、この「ケイ酸塩鉱物」の一種であり、かんらん石を含む石鉄隕石を「パラサイト」と呼ぶのだ。ちなみに「寄生」等を意味するパラサイトとは無関係。パラサイトの名は、この種の隕石を初めて発見した、パラスという人名に由来するものなのだ。」

亘理『飛びついたの?!』

悠「ふふっ。」

亘理『何か返答して!?』

悠「で、寝る前にちょっと読もうとして気がついたら朝になってたわ。」

神姫「読み切ってるじゃない」

千世子「隕石は、綺麗にカットした標本が作られ売られてますが、中にはこのパラサイトから切り出したものを研磨し、宝石「ペリドット」として仕上げたものも作られており、収集家に珍重されているのだ。」

悠「小説を一気読みしたのは久々だったわ。」

摩耶「面白かった?」

悠「いやー、超面白かった。真夏の方程式もよかったけど、こっちは更によかったね。ぜひ映画化かドラマ化してほしい。」

神姫「ドラマは聖女の救済で終わったのよね。」

千世子「石鉄隕石は、地球に降り注ぐ隕石の総量の1パーセント程度しかない希少なものですが、この種の隕石は、地球産のペリドットと同様に、地球以外の天体のマントル層で作られたものが、なにかの原因で宇宙に飛び散ったものと考えられており、地球以外の天体の成り立ちを研究するための、重要な資料となっているのだ。」

悠「ぶっちゃけ、あれも映画化してほしいぐらいだった。でも、細かいこと言うと2時間じゃ足りないんだよな。」

摩耶「じゃあ、それ一本をドラマワンクール分でやるとか?」

悠「……もしかしたらそれが正解なのかもしれないな。」

神姫「途中でなかたるみしそうね。」

悠「そこら辺が難しいよなぁ。」

千世子「このようにペリドットの仲間たちは、地球や宇宙の一部を切り取ったものとして研究され、私たちに様々な情報を教えてくれるのだ。それは宝石としての価値よりも、ある意味ではずっと大切で、しかもロマンチックなものだといえるのではないでしょうか。以上、ペリドットのじゅぎょーだったのだ。」
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