ー奇談ー學校へ行こう(2)5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「そうだ鍋しないと」

摩耶「唐突だね。」

悠「食べ物が美味しい季節。シンプルに具材を出汁に突っこんで食べる。おいしいね。」

神姫「でも、今期は野菜高騰してるのよね。」

悠「台風と台風と台風と雨のせいだな。」

亘理『台風だけでいいような…』

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。神話では、愛と美の女神アフロディーテが深い悲しみで流した涙が海に落ち、彼女に恋い焦がれていた海の神ポセイドンがそれをそっとすくって貝に納めたところ、それが真珠になったというのだ。」

悠「とりあえず雨も一個くわえておかないと寂しがるだろ。なぁ」

雨「うるさい黙れ」

悠「見てみろ照れてる」

摩耶「僕にはただただ怒りを表してるようにしか見えない」

亘理『私も』

千世子「日本でも古くから「白玉(しらたま)」と呼ばれ珍重されてきたと、古事記や日本書紀にも記されているのだ。」

悠「コジキにもそう書かれている」

摩耶「ニンポだ、ニンポをつかうぞ」

悠「ニンジャ、なんでニンジャ!」

雨「忍者じゃねーわ!」

悠「じゃあ蜘蛛女」

千世子「允恭天皇の御代。天皇は淡路島に狩猟にでかけますが上手くいかないのだ。占いで「明石の海底の深いところにある真珠を取って供えれば獲物が得られる」とわかるのだ。」

神姫「怪人みたいね」

悠「似たようなもんだろ」

雨「妖怪じゃい!」

サタン「我は魔王なのだ!」

悠「なんで今、参加してきた」

千世子「天皇は海人を集めて明石の海底に潜るように命令しますが、あまりの海の深さに誰ひとりとして底に到達できなかったのだ。」

サタン「魔王だからなのだ。」

悠「魔王だったら大人しく桃姫でも攫ってたらいいんじゃないですかねぇ」

摩耶「でも、桃のお姫様自力で脱出でも何でもできるよね。実際」

悠「ヘタしたら配管工より強いしな。」

神姫「武器はフライパン一本でいいしね。」

千世子「ただひとり潜れた男狭磯という男性は、大アワビを持ち帰って息絶えたのだ。命と引き換えに真珠を持ち帰った男の忠誠心に心を打たれた天皇が彼のために墓を建てて手厚く葬ったところ、次の狩猟では大変な成果だったのだ。これは日本書紀に登場する伝説で、男狭磯の墓は伝説とともに残っているということなのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ。」
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