ー奇談ー學校へ行こう(2)5

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「また雨なのだ」

悠「どうなってるんだよ」

雨「私に聞くな!」

悠「てるてる坊主でも吊るすか」

摩耶「首吊り?やめなよ」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。自然界の中で偶然生み出された真珠は、その昔現在よりもさらに高価なものだったのだ。真珠の希少価値を物語るエピソードのひとつにこんなものがあるのだ。」

悠「誰が首を吊るといったか!」

雨「何だったら吊るしてあげるわよ。」

悠「ひとりで緊迫プレイしてなさい」

雨「するかボケ!」

悠「ホント口の悪い子グモちゃんだわ」

千世子「エジプトの女王クレオパトラは、権力闘争のなか、ジュリアスシーザーの愛人を経てローマのアントニウスに接近、その美しさと美貌で彼を虜にしたのだ。ある日、彼女はアントニウスを喜ばそうと豪華な晩餐会を開いたのだ。しかし美食になれていたローマ人には大したご馳走でもなく、アントニウスは喜ぶどころかガッカリしてしまうのだ。」

サタン「坊主を吊るすのだ?」

悠「その言い方だと本願寺の焼き討ちみたいに聞こえる」

摩耶「人間無骨を振り回そう」

悠「それ胴体なくなっちゃう」

神姫「つる首もないわね。」

千世子「そこでクレオパトラは、身に着けていた大きな真珠のイヤリングをとても強いビネガーに落として溶かし、「ローマとエジプトの繁栄のために!」と乾杯したのだ。その真珠は世界で最古にして最大、価値も相当なものだったので、さしものアントニウスもこの大胆な接客表現に唖然。クレオパトラはもう片方のイヤリングもいれようとしますが、アントニウスがそれを阻止したというのだ。その話は一夜にして瞬く間に世間に広がり、一夜にしてクレオパトラの持つ権力を誇示することに成功したと言われるのだ。」

亘理『てるてる坊主の話だよね?』

悠「そうだよ。なんの話だと思った?」

亘理『スプラッタ』

悠「ははっ、亘理はおかしいなぁ。」

亘理『ええ、なんか納得できないなぁ』

千世子「また、タチヒの民話にも真珠が登場するのだ。雨の神の息子トゥアマヌは村長の娘マイアとカヌーで海に出たのだ。トゥアマヌは海に潜ってマイアへの贈り物を探し、3つの真珠貝を掴んで戻ってきたのだ。マイアが差し出された贈り物の真珠貝のひとつを開けると、中には美しい銀色の真珠が入っていたのだ。マイアは喜びますが、トゥアマヌは彼の母、雲の女神のネックレスはもっと美しい真珠が輝いていると思うと満足できないのだ。」

サタン「我が雨雲を消し飛ばしてもいいけど、ちょっと今はメフィストに目をつけられてるから大事ができないのだ」

悠「やっぱり卵の一件が後ひいてるのか」

サタン「まったくこれだから年寄り悪魔は嫌いなのだ!」

悠「年寄りなのか。」

サタン「かなり原初に近い悪魔なのだ。まぁ、魔王の我のがぜんぜん偉いのだ!」

悠「ほーん」

千世子「ふたつ目の真珠貝を開けると、もっと大きく光る白い真珠が出てきたのだ。マイアはまた喜びますが、彼はいうのだ。「これはまだ僕の探しているものじゃない……」。三つ目の真珠貝を開けると、とても大きな孔雀色の真珠が出てきたのだ。大喜びをしたトゥアマヌは「この真珠の中に虹を見るときは、僕のことを考えておくれ。僕はそこに住んでいる。」この言葉とキスを残して、彼は消えていったのだ。マイアが手のひらに残った3つの真珠を見ると「彼がここに居る、いつも輝き、この色彩が優しく私に希望の光となって見つめていてくれる」と感じたのだ。彼女は微笑みながら、この真珠たちの放つ光を通して、いつでも彼に会えるのだと心をときめかせるのでした。今日はここまでで続きは次回なのだ。」
52/100ページ
スキ