ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(4/8/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「新しい鍋が欲しいなぁ。」

摩耶「圧力?中華?」

悠「圧力鍋。野菜を丸ごといれたカレーを作りたい。」

花描「あ、美味そう」

神姫「食べにくそうではあるけどね…」

千世子「鍋……あ、なら今日のじゅぎょーはこれなのだ」

【カルドロン】
豊穣と死と再生の象徴

悠「カルドロンは日本語で「大釜」だな」

千世子「もともとはラテン語で「熱い風呂」という意味だったのだ。魔法の道具としてカルドロンが登場する場合は、ほとんどが金属製で、大きな鍋のような形をしているのだ。屋外でお湯を沸かしたり、食物を煮たりするのに使われたのだ。」

悠「……」

摩耶「なに考えてるの?」

悠「屋外で大鍋でなにか食うのもありかなと」

神姫「食欲魔神ね…」

千世子「大きなカルドロンはたくさんの食糧を煮るために使われたことから、これを豊穣の象徴と見なしていた地域があったのだ。例えば、ケルトの神が持つ大釜は、食べ物や酒を無限に出すことができるのだ」

悠「最高だな。欲しいなぁ…」

花描「あと女の子がいれば?」

悠「まさに酒池肉林!」

神姫「はぁ…」

悠「うはっ…ゾクッとした」

摩耶「末期に近いよ。」

千世子「一方で、神に生け贄に捧げる儀式にも使われたり、石川五右衛門が処されたような茹釜での刑にも使われたことから、カルドロンは死と再生の象徴でもあったのだ。」

悠「茹釜は勘弁だなぁ…」

神姫「いっぺん死んでみる?」

悠「うぉ、地獄少女…」

千世子「ウェールズの伝説にあるアヴァロンの地には「黒い魔法の釜」と呼ばれるアイテムがあり、これに戦争で死んだ人間を入れおくと、生前よりも屈強な戦士となって蘇ったというのだ」

摩耶「まさに死と再生だね」

花描「無限復活で強化とかえげつないな」

千世子「魔女とカルドロンの関係は、ギリシア神話の時代からあったようなのだ。コルキス国の「魔女のメディアの大釜」がそれなのだ。体の血を全て抜き出して魔法の薬で血管を満たし、そのまま大釜の中に入って茹でられると若返ることができる、というものだったのだ。ちなみにその大釜は後に「コップ座」となって今も空で輝いてるのだ。」

悠「コップ座は南半球でしかみえないけどな」

千世子「ヨーロッパでは中世に魔女狩りが起こったのだ。このときに魔女とカルドロンの関係は強められていったらしいのだ。当時、野山で野草などを煮て病人に処方していた女性たちは、自然崇拝に近い独自の宗教をもってて、キリスト教的な思想を受け入れなかったのだ。この集団を教会が、彼女らを弾圧する方法として「カルドロンを使う女性=魔女」というイメージを定着させていったという説もあるのだ。以上、カルドロンのじゅぎょーだったのだ」
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