ー奇談ー學校へ行こう(2)4

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

亘理『あったかいなぁー。』
だらーん

悠「ペットボトルを使って空中栽培できないかと考えてるんだけどな。」

摩耶「悠君は畑だけでなく空中も菜園化しようとしてるのかな?」

悠「どっばぁーんと吊り下げられるトマト達…」

神姫「ブドウじゃないんだから」

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。トイレの花子さんが誕生したのは1950年代とされているのだ。しかし、その後語られたのは花子さんの外見には、戦時中のもんぺ姿だったり、赤いスカートのおかっぱ頭の子や、長い黒髪でブラウス姿の少女だったりと、意外に幅広いのだ。この中で、もっと流布した姿が、赤いスカートでおかっぱ頭の少女なのだ。姿を与えられて、出現する理由までも解説されるようになったことで、花子さんには、いわゆるキャラクター設定がなされたわけなのだ。」

亘理『というか、今私みて空中栽培の話してたわね?』

悠「いや、ぶら下げるにしても亘理みたいに天井に吊るせたらもっといろいろできるんじゃないかなぁって。」

神姫「いや、天上がある場所やったらだめでしょ」

摩耶「部屋の中まで菜園にしたら真桜ちゃんに吊るされるよ」

悠「なまじ冗談に聞こえないんだよよなぁ。」

千世子「話を怖くするために作られた花子さんのイメージが、逆にキャラ設定されたことで、徐々に子供たちの身近な存在へと変貌していったのだ。さらにキャラ設定の過程で、小学生で可愛らしい童女の姿で描かれていったのだ。この事も、花子さんが、より親しみやすい存在となる原因のひとつなのだ。」

累「野菜なんて買えばいいじゃん」

悠「おまえは何も分かっちゃいねぇ!」

累「汗水かいて働くことなんて分かりたくないわ」

亘理『うわぁ…』

摩耶「マリーアントワネットかな?」

千世子「90年代の都市伝説ブームの中で、トイレの花子さんも積極的にメディア化されるようになり、映画やアニメ、コミックなどで花子さんが登場するようになるのだ。イメージが映像化することによって、その存在がさらに身近なものとなり、それまでは、ひたすら恐怖をもたらすだけだった花子さんが、他の怪異から子供たちを守る、守護霊的な、あるいは座敷童のような、親しみのある存在としても語られるようになっていったのだ。そして、その存在は日本全国に色々なバリエーションを加えて広がっているのだ。各都道府県によって、それぞれ特徴を持つ花子さんが存在し、その場所ごとにさらに細かい性格が確立されていったのだ。」

リリス「こりが人に傷つけるための働きなら、いくらでも汗水かくんだけどね。」

神姫「あきれるわ」

悠「早くどうにかしないと大変なことになるぞ」

摩耶「手遅れじゃない?」

悠「いったいどこのどいつがこんな悪魔を作り上げたんだ…」

婀娜「作られたんじゃない、ただ生まれただけなのだ。」

千世子「やみ子さん、れい子さんなどの類話や太郎くん、次郎くんなど男の子バージョンの花子さんも、多分トイレの花子さん成立後のバリエーションと考えられるのだ。これも花子さん自体が、恐怖の対象から親しみのある存在へとか変化したことと関係があるのかもしれないのだ。いずれにせよ、トイレの花子さんが、いまだに都市伝説中で一番人気のアイドルであることは変わりないのだ。以上、トイレの花子さんのじゅぎょーだったのだ。」
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