ー奇談ー學校へ行こう(2)4

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「梅の花が咲きだしてるなぁ。」

摩耶「桜の花が開花してるところもあるらしいよ」

悠「春だなぁー」

サタン「……」

悠「ん?変な顔してどうした?」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。前回の続きからで天女が、舞を舞うには羽衣が必要だといったので、白龍は最初は取り返したら約束を保護するのではないかと疑ったのだ。しかし天女は、約束をたがえるのは人間のすることで、天人である自分たちは、必ず約束を守るものだと諭され、ようやく天女に羽衣を返したのだ。」

サタン「なんか目がかゆい気がするのだ。」

悠「それ、花粉症じゃね?」

サタン「花粉……症?」

摩耶「花とかから出た花粉が目とか鼻をムズムズさせたりする症状だよ」

サタン「おのれぇ……花粉めぇ……なのだ。」

千世子「羽衣を返してもらった天女は喜び、約束どおりに天上の舞を舞ったのだ。三保の浦野豊かな自然の中で見る天女の舞は、この世のものとは思えないほど見事で美してものだったというのだ。そして、白龍が堪能したころ、天女はあらためて礼を言って、天に帰ったのだ。」

悠「いや、花粉症と断定したわけじゃないからな。」

サタン「ならば花粉を焼き払えばいいのだ」

神姫「だいぶゴリ押しな答えね」

悠「ある意味では間違いじゃないんだけど、目薬買ってきてやるからやめろよ」

サタン「苦くないのがいいのだ」

千世子「三保の松原に残る羽衣伝説は、羽衣を取った男の計らいで、すぐ羽衣を返すが、日本各地に残る羽衣伝説では、かなり長期にわたって天女は地上に残る羽目になるパターンが多いのだ。」

悠「目薬ってんのに甘いも苦いもあるか」

サタン「飲み薬じゃないのだ?」

摩耶「飲む目薬……ブルーベリーかな?」

亘理『ブルーベリーってホントに目に効くの?』

悠「効果はあるけど、治療したり目を画期的に良くするものではないからな」

千世子「一般に羽衣伝説として各地に残る伝承では、羽衣を隠した男は、羽衣を返そうとはせずに、あろうことか天女を自分の嫁にしてしまうのだ。天女のあまりの美しさに、そのまま返すことができなかったのだが、天女にしてみればいい迷惑で、拉致監禁以外の何物でもないのだ。数年地上で暮らし、天女は子供を産み、男は幸せな日々を送るのだ。しかし、ある日偶然天女は、男が隠していた羽衣を見つけて、ようやく天に帰ることができるようになるのだ。このとき、子供を連れて帰るケースもあれば、置いていくケースもあるのだ。」

スキュラ「とりあえず目を洗ってみたらどうですか?塩水で」

悠「いや、塩水はダメだろ?!」

スキュラ「ですが、消毒効果もありますよ?」

悠「あったとしてもそれで塩水で目を洗うってのがきついんだよ。」

スキュラ「?」

悠「駄目だ。水中でガンガン目が開けるひとだった。」

千世子「この場合、雪女や蛇女房、メリュジーヌなどと同じ異類婚姻譚となるのだ。異類婚姻譚は、多くは名家の出自や神社の縁起などを由緒立てるために使われることがあり、羽衣天女も、滋賀県伊香郡余呉町では、羽衣天女を伊香具神社の祭神に由来しているのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ。」
62/100ページ
スキ