ー奇談ー學校へ行こう(2)4

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「寒い」

摩耶「しばらく聞かなかったのにまた言い出した」

亘理『今日は雨だしね』

悠「こんな日には柔肌に包まれて眠りたい」

摩耶「デバネズミとか?」

悠「確かに柔肌!」

【鬼子母神】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。『法華経』に古代の大量殺人事件の事が記されているのだ。インド神話に登場する鬼、夜叉神であるパーンチカとその妻ハーリティーは、とても仲の良い夫婦で、二人の間には、なんと1000人もの子供が居たのだ。特にハーリティーは、子供たちに溺愛していたのだ。ハーリティー幼い子供たちを育てるために、他人の子供を攫っては食べていたが、あまりにも頻繁に子供を攫われ、人々は怒り、そして困り果てていたのだ。だからといって、ハーリティーに直接文句を言いに行くのは怖いのだ。そこで、人々は釈迦に救いを求めることにしたのだ。」

亘理『デバネズミってなに?』

悠「歯が出てるネズミってのが一番分かりやすい例えだな」

摩耶「ちなみに毛がないよ」

亘理『ひぇっ!』

悠「わりと可愛いぞ」

千世子「人々の訴えを聞き入れた釈迦は、ハーリティーにも人々の苦しみを理解させなければならないと考え、ハーリティーが一番かわいがっている末の子供アイヌの姿を、神通力を使い隠してしまったのだ。突然アイヌが見えなくなったことで、ハーリティーは気も狂わん限りに動揺したのだ。そして、思いつく限りの場所を探し回り、子供の名前を叫び続けたのだ。」

神姫「ひとによってはめっちゃ苦手な人もいるでしょうけどね」

悠「ただ、おれが望んでる柔肌はそうじゃないんだよなぁー」

摩耶「ミミズ?」

悠「シンプルにミミズに包まれるとか気持ち悪……いや、ミミズ千び」

神姫「……」
ガシッ、メギッ!
悠「ぎぃ!」

千世子「へとへとに憔悴しきったハーリティーの前に釈迦が現れたのだ。ハーリティーは、自分の子供がいないことを必死の面持ちで釈迦に訴えたのだ。釈迦は、「1000人の子供がいて、その中のたったひとりがいなくなっても、そのように悲しんでいるのだな。ならば、よく考えるといい。人々がたったひとりだけの我が子をしなった悲しみというものを」と、ハーリティーを諭したのだ。」

摩耶「無茶しやがって」

累「トドメいこう、トドメ」

リリス「斧?鉈?」

悠「おい、そこの悪魔ちゃんどもから今すぐ凶器を回収しろ」

摩耶「……しかし、誰も動かなかった」

千世子「ハーリティーは、釈迦の言葉で自分が犯してきた過ちに気付き、これからは仏に帰衣することを誓ったのだ。釈迦は、アイヌをハーリティーに返してやり、ハーリティーを護法善神列し、子供と安産の守り神としたのだ。」

累「どっせい!」
ズバッ!
ガイン!
悠「やめろぉっ!」

リリス「こいつ、反撃しやがる。」

サタン「そらそうなのだ。」

神姫「しかし、無駄に元気ね。」

千世子「インド生まれの鬼子母神(きしぼじん)は、密教とともに日本へやってきて「法華教」を中心として子供の安全や安産祈願の神として信仰されるようになったのだ。なお、神になったことから日本の寺院では、鬼子母神の鬼の字の角とされる部分、最初の一角の「´」がないことが多いのだ。以上、鬼子母神のじゅぎょーだったのだ。」
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