ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(3/28/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「ちぇき、珈琲買ってきたぞ」

摩耶「僕、加糖さん」

花描「俺は無糖だな」

神姫「私はどっちでもいいわ。」

悠「千世子は?」

千世子「珈琲……ジュースがいいのだ」

悠「そう思ってカフェオレ買っといた。」

千世子「さすがあんちんなのだ。じゃ、飲みながら昨日の続きをするのだ。九字護身法は、アニメや漫画の世界では頻出なので、知っている人も多いのだ。」

悠「贅沢ドリップもうまいけど、やっぱり珈琲はボスがいいな」

摩耶「けど、悠くんて、加糖さんでも飲むよね」

悠「どちらもこよなく愛せるのさ」

千世子「九字の正式な手の組み方は、かなりアクロバティックで無理のある形も含まれているのだ。いざ危機に直面して「九字を貼ろう」と思っても素早い動作はなかなか難しいのだ。」

悠「実際、印なんか切ろうとしたら指つるよな」

花描「ピアニストならいけるんじゃないか」

千世子「このため、より実用的に素早く結界を張るための、九字の簡易版「早九字」という手法も出てきたのだ。「早九字」にはバリエーションがいくつか存在するのだ。もっとも代表的なものは「臨」で横一直線に手をうごかし、「兵」で縦一直線に手をうごかし、「闘」で横一直線に手をうごかし、以下、縦、横、縦、横…と九回繰り返す方法なのだ。」

摩耶「横、縦、横……あれ、それって陰陽師のあれじゃない?」

千世子「陰陽師の護符が由来となった「ドーマンセーマン」のデザインには、縦五本横四本の格子状の模様が含まれていて、早九字の手の動きをそのまま表現したものと言われているのだ」

神姫「ほかには早九字の手法はないの?」

千世子「もちろんあるのだ。「バツ印を描くように斜線を九回描くように手を動かす方法」「空中で梵字(サンスクリット)の『アーンク』を書くように手を動かす方法」などが知られているのだ。」

悠「昔、木曜の怪談ってドラマで玄武、白虎、朱雀、青龍……ってオリジナルの九字を切ってたな。」

千世子「密教では、位の低い僧や一般人が高僧に無断で九字の印を結んではいけないことになっているのだ。一種の越権行為と見なされるわけだか「きちんと修行をした者でないと、形だけ真似して九字を使っても効果はない」とされているようなのだ。」

摩耶「一般人はみだりにつかってはいけないって感じだね」

千世子「ちなみに道教では、個人がそれぞれ「道」を学ぶことを基本としているので、密教のような考え方はないのだ。誰がどこで九字を使おうが、本人の自由となっているのだ。以上、九字のじゅぎょーだったのだ。次回からは魔法のアイテムのじゅぎょーに入っていくのだ」
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