ー奇談ー學校へ行こう(2)4

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「大雪山!」

摩耶「登りたいの?」

悠「全身全霊をかけて遠慮したいでありんす。」

サタン「登山、楽しそうなのだ。」

悠「大雪山を駆けるのは登山なんてレベルではない」

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。前回の続きからでローレライは、修道院に送られることになったのだ。しかし、すべてに絶望したローレライは、修道院に行くことさえ、苦痛となっていたのだ。修道院への道で、ライン川を臨む岩の所に来たのだ。そこは、かつて愛していた男の住む城が見える場所だったのだ。ローレライは、最後に秘めた思い出の場所を見てみたいと訴えたのだ。美してローレライの頼みに、屈強な獄吏もついには許し、彼女を護送車から出してしまったのだ。」

亘理『雪山でも……私は……登ってみたい』

悠「恨めしそうに言うのやめてくれ。」

摩耶「妖怪ですし」

亘理『ううらめしやー』

悠「それは幽霊だろ」

千世子「ローレライは岩の上で恋人との思い出の歌を静かに歌ったのだ。獄吏たちは、すっかり歌声に聞きほれてしまい、うっかり目を閉じてしまったのだ。ローレライは、その瞬間を見逃さず、岩のてっぺんまで駆け上がると、そこから一気にラインの流れに身を投じてしまったのだ。止める間もなく囚人を取り逃がした獄吏たちだったが、ローレライの歌の魔力のためか、足が一歩も動かなかったのだ。しばらくして、ようやく動けるようになったとき、獄吏たちは慌ててライン川の岸辺に向かったが、既にローレライの姿はどこにもなかったのだ。その後、ローレライは水の精となり、ライン川を航行する船乗りたちに歌をきかせて誘惑し、進路を誤らせて船を沈没させるようになったのだ。」

亘理『……妖怪ってなんだっけ?』

悠「それにおれに聞くなよ」

摩耶「でも、悠君は化物ですし」

悠「だれが化け物か!絶世の美少年だろ!」

累「あいつを殺すわ」

リリス「Ok」

千世子「そして彼女が身を投げた岩が、今はライン川の観光名所としても名高いローレライ岩なのだ。」

悠「なんでじゃい!」

累「私は自分を悪だと分かっているが、吐き気を催すような邪悪だけはのさばらしておけねぇ!!」

悠「だれが吐き気を催す邪悪だ!」

リリス「……」
スッ

悠「黙って指さすな!」

千世子「ローレライという言葉は、1824年に発表された詩人ハインリッヒ・ハイネの「DieLorelei」という詩に、ドイツ人作家フリードリヒ・ジルヒャーが曲をつけて世界的に有名になったのだ。日本でも1909年に近藤朔風が訳詞を発表して、その後文部省唱歌に選ばれ広まったのだ。今回はここまでで続きは次回なのだ。」
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