ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(3/26/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

摩耶「もうだいぶ暖かくなったね。」

花描「つくしとか生えてきてるしな」

神姫「悠的には嬉しいんじゃない?」

悠「まぁ、嬉しいが……まだまだ寒い。」

摩耶「いっしょに太極拳やる?」

悠「それもありかな」

千世子「健康になりそうなのだ。けど、体を動かすのはじゅぎょーを受けてからなのだ。」

【反閇(へんばい)】
歩いて描く、目に見えない魔方陣
地面に出現する北斗七星

摩耶「反閇かぁ」

千世子「日本の陰陽師は、特別な方法で歩くことによって魔力を発揮したのだ。この特別な歩き方を「反閇」というのだ。」

花描「摩耶君は知ってるのか?」

摩耶「反閇は中国の道士(道教の僧)が方術師が行った「禹歩(うほ)」って呼ばれる歩行法が日本に入って、そこから独自に進化したものなんだよ」

千世子「反閇の歩行パターンは多くの場合、星の配置(星座)をなぞるように足を運ぶものなのだ。例えば「九星反閇」と呼ばれる歩行法では、北斗七星の形をなぞるように足を運ぶのだ。」

神姫「北斗七星なのに「九星反閇」なの?」

千世子「それにはちゃんと理由があるのだ。現在の北斗七星のほかに、舗星(ほせい)。」

悠「漫画北斗の拳に登場する死兆星と同じものだな」

千世子「弼星(ひつせい)を加えて、計九個の星を順に踏むことになるからなのだ」

神姫「弼星なんてあった?」

悠「弼星は架空の星だ」

千世子「陰陽師は、反閇によって地面上に星々を描くのだ。それによって周囲の空間が清められ、悪霊や邪鬼から身を守ることができたというのだ。つまり、反閇の本質は、西洋の「マジックサークル」と同じなのだ。ただ、反閇によって描かれた図形は目に見えないという点が異なるだけなのだ。」

花描「なるほど、それで摩耶君がいってた禹歩ってのは?」

摩耶「「禹歩」に含まれる「禹」の字は「夏禹」古代中国の帝の意味ね。禹歩は伝説的な黄河の治水工事を成功させたけど、その際にあまりの激務で身体をこわして、下半身に障害が残ったって伝説があるよ。「禹歩」の歩行法は、治水工事成功後の夏禹の歩き方をわざと真似ることで、物事の成功を祈るものだったんだよ。」

花描「なるほど」

千世子「反閇あるいは禹歩のように、歩くことで特別な力を得るという発想は、世界で他に類を見ないのだ。」

悠「トトロの畑の周りを歩き回ると、種が一晩で大木に成長するのも反閇のひとつなのかもな。そういや、ファイナルファンタジーVで無事を祈るために、ひたすらぐるぐる走るウェアウルフがいたな…。」
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