ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「白菜を適当に刻む、鶏肉も適当に刻む、鍋にぶち込む、水を入れる、味覇と黒コショウ、ごま油少々であとは煮込む。」

コトコトコトコト…

神姫「なにしてんの」

悠「寒いから白菜とチキンのお手軽中華スープ作ってる」

摩耶「赤熱甲殻は未だに熱を帯びてるけど……鍋に穴あかない?」

悠「大丈夫なはず。」

【スフィンクス】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。スフィンクスは、顔と乳房が人間で、身体と脚と尾がライオン、鷲の羽の生えた怪物なのだ。彼女は、女神ヘラの命でテーバイ近くのピーキオン山に澄みつき、ミューズたちになぞなぞを教わり、それを通りかかる旅人に出題しては、答えられないものを食べていたのだ。そのなぞなぞは、ただひとつなのだ。「それはひとつの声を持ち、朝は四本、昼には二本、夜には三本足になるものは誰だ?」なのだ。」

亘理『……授業うけならがこの臭いは卑怯だと思う』

悠「夜道歩いてるときにふわっと匂ってくる中華料理屋の香ばしい匂いとか殺人的に卑怯だよな」

摩耶「わかる」

サタン「醤油とかゴマ油の香ばしい香りって秘教なのだ」

神姫「ずいぶんと日本人てきなことを言うようになったわね。」

千世子「それまで、なぞなぞというものに馴染んでいなかったこともあって、この問いに答えられる旅人は、一人もいなかったのだ。テーバイの王も、旅人を悩ます怪物を退治しようとなぞなぞに挑戦したが、答えられずに食べられてしまい、テーバイには王がいなくなってしまったのだ。そこでテーバイの執政クレオンは、なぞなぞを解いたものに、テーバイと前王の妃イオカステを与えると布告を出したのだ。」

悠「コイツらも長いもんなこっちきて」

摩耶「しっかりと醤油や味噌の味をしめてきてるんだね。」

スキュラ「私は元々、海藻類や魚は主食でしたけどね。」

ベヒモス「鉱石がいいモス」

悠「そしてブレないのもいるなぁ。」

千世子「ある日、ピーキオン山に屈強な若者オイディプスがやってきたのだ。スフィンクスは、若者の前に立ちはだかり、いつもの質問を出したのだ。はかは、オイディプスは、即座に「それは人間だ」と答えてしまったのだ。答えを言い当てられた屈辱から、スフィンクスは岩の台座に駆け上がり、海に向かって身を投げたのだったのだ。」

累「ズズッ、ちょっと味薄くない?」

リリス「あと、白菜多い。もっと肉入れてよ肉。」

悠「勝手に食ってんじゃねぇ!!」

亘理『さらに肉を要求してる』

摩耶「子供はお肉好きだからね」

千世子「エジプトが起源のスフィンクスは、もともと、ファラオの顔とライオンの身体を持つ神聖な生き物だったのだ。それが、早い段階からメソポタミアやギリシャへ渡りギリシャ神話で語られるように怪物化していったと思われるのだ。」

悠「肉が食いたきゃ勝手に焼いて食え」

累「あいつの手を焼いてやろうか」

リリス「鉄板焼いて足の裏とかに当ててみよう」

悠「この悪魔ども!!」

亘理『落ち着いて、いや、怒るのも分かるけど…。』

千世子「特にギリシャ神話において、スフィンクスは多くの怪物の父であるテュポンやライオンの頭、身体はヤギ、さらに蛇の尾を持つキマイラなど、合成獣系神々や怪物の娘として描かれるのだ。王権を所持する神々しい存在から、いつしか子供を攫って、人間を食べる怪物に変化していったのだ。知能は高いが、たった一つのなぞなぞが解かれただけで絶望して身を投げる、このプライドの高さだけは、エジプトでファラオの王権を象徴していた名残だろうかなのだ。以上、スフィンクスのじゅぎょーだったのだ。」
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