ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(3/25/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

摩耶「♪~~」

花描「お、珍しい摩耶君が鼻歌歌ってる」

悠「iPod貸してやったんだ。なに聞いてるんだろうか。」

神姫「悠はなに聞いてたの?」

悠「もちろん、ポルノグラフィティ」

千世子「摩耶兄ちゃんの鼻歌で……今日のじゅぎょーはこれなのだ」

【嘯(しょう)】
魔法が飛び出す不思議な鼻歌?

摩耶「嘯は本来は音楽を使った中国の魔法だよね?」

千世子「そうなのだ。口からだす音によって魔法をつかう。それが「嘯」なのだ。一般的なスペルキャスト(呪文詠唱)とは違って、意味のある言葉は口にせず、純粋な「音」だけを口から発するのだ。その効果によって魔法を発動する方法が嘯なのだ」

花描「摩耶くんは嘯を知ってるのか?」

摩耶「もともと嘯は、古代中国の音楽の一種だったんだよ。歯と唇を使って音を出し、さまざまな曲を奏でることができたらしいよ。けど、それが具体的などんな発音だったかは、今では解ってないみたい。」

千世子「中国北西部、モンゴルには今でも「ひとりで二つ以上の旋律を同時に奏でる」という独特の歌唱法「ホーミー」が存在するが、ひょっとしたら古代中国の「嘯」もホーミーに近いものだったかも知れないのだ。」

神姫「じゃあ、具体的にはどんな魔法を使う際に「嘯」を用意ていたの?」

千世子「古代の中国では、主に召喚魔法の手段として「嘯」が用いられていたようなのだ。一般的な召喚魔法として精霊や悪魔を呼び出すだけでなく、野生の動物や、雨雲をよぶことまでできたというのだ。」

悠「鳥の地鳴きと鳴き声みたいな特別な意味をもって聞こえる音みたいなもんか」

千世子「ところで日本にも、中国から「嘯」という漢字は伝わってきているのだ。「嘯」は、音読みで「しょう」訓読みで「うそぶく」となるのだ。日本での意味は「口笛」になるのだ。日本の「嘯(口笛)」も、中国の嘯と同様、やはり「口から音をだす」という意味を表すのだ。」

悠「こういうの聞いたら口笛はそうそうふけないな。」

千世子「日本では「夜に口笛を吹くと蛇がでる」という諺があるが、ここでいう「蛇」は「邪」を表すともいわれてるのだ。つまり、日本でも「嘯」を使うことで動物(蛇)や精霊(邪)を呼ぶことができるとされていたのだ。」

摩耶「日本で口笛を吹くことは、中国の召喚術における「嘯」とまったく同じ効果があるんだね。」

千世子「そういうことなのだ。以上、嘯のじゅぎょーだったのだ。」
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