ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「コタツを、コタツを持てぇい!!」

神姫「うるさい」

悠「すいません寒いんでつい」

累「しかたないなぁ。ちょっと待ってて、みーちゃんガスバーナーもってきて」

悠「やめろぉっ!」

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。全快の続きからで、伊右衛門にはすでにお岩とい妻がいるのだ。これを追い出さねば、物事がうまく運ばないと、両人は頭を悩ましたのだ。密談は、伊右衛門を田宮家に紹介した秋山も加わり、知恵を絞った挙句、伊右衛門が岩に嫌われるように仕向けることにしたのだ。伊右衛門はそれがあまりにも酷いやり方なので、いったんは断ったが、喜兵衛と秋山が再三に渡って勧めるので、しかたなく応じることにしたのだ。」

摩耶「一気にホット」

悠「丸焦げジャイ!」

累「じゃあ石を焼いてあげるからそれを抱きなさいよ」

悠「焼き石の拷問じゃねぇか」

摩耶「ホットストーン」

千世子「その日から伊右衛門は、毎日のように博打に出かけ、金がなくなったといっては、家財道具や岩の着物を質屋へ持ち込むようになったのだ。家にもめったに帰らず、たまに帰宅しては、岩の着物を持ちだすという行動を繰り返したのだ。岩は、伊右衛門のあまりの変わり様に、たまたま家にいるところを捕まえて問い詰めたが、それが帰って伊右衛門の勘気に触れて、岩は何度も打擲(ちょうちやく)されたのだ。その後伊右衛門は岩に会えば乱暴し、挟持米も金も家にはまったく入れなくなったのだ。」

悠「ホットって優しい感じじゃない」

千味「ガスバーナーもってきたよ!」

悠「帰れ!!」

神姫「どっから持ってきたのかしら」

摩耶「たぶんどっかに専用の拷問器具庫があるんだよ」

千世子「その様子を見かねた隣人の忠告もあって、岩は奉公に出ることとなったのだ。しばらく距離を取ってみれば、やがて伊右衛門も落ち着いて、元の鞘に戻るかも知れないという助言に従ったのだ。」

亘理『でも、隙間風とかけっこう冷えるよね』

サタン「何か隙間に詰めたらいいのだ」

悠「漆喰」

亘理『しっくいってなに?』

摩耶「建材だね」

千世子「しかしそれも喜兵衛の企みだったのだ。岩が、番町にある某家の下女奉公に出たのを確かめると、喜兵衛は琴を田宮家に送りこんだのだ。こうして伊右衛門は正式に琴を妻に迎えて、琴は無事に出産したのだ。しかも、二人の間には次々と子供が授かり、仲睦まじく暮らし始めたのだ。」

悠「漆喰は瓦や石材の接着や目地の充填、壁の上塗りなんかに使われる、消石灰を主成分とした建材だ。」

亘理『……コンクリート?』

悠「消石灰っただろ!」

累「そんな面倒なことしなくても適当に蜘蛛女の糸で塞いだらいいじゃない」

悠「それだ!」

雨「それだ!じゃない!」

千世子「一方、下女として岩が働き始めて数年が経ったが、岩は、いつか田宮家で伊右衛門と再出発できるものと信じ、毎日奉公に精を出していたのだ。ところがある日、刻みタバコ売りの男から、田宮家の様子を聞いてしまったのだ。」

悠「頼むよ。スパイダーウーマン」

雨「やかましいわ!」

悠「なんか怒られた」

摩耶「ウーマンじゃなくてガールにしないから」

悠「ああ、それかぁ」

千世子「岩は、初めて自分がだまされたことを知り、そのまま奉公先を飛び出してしまうのだ。狂乱状態に陥った岩の目は血走り、髪は解けて乱れ、その姿は本物の鬼女のようだったというのだ。そして、懐かしの田宮家の辺りまで走ってきたが、なぜか家に入ることもなく、そのまま西の方角に走り去ったのだ。その後、岩の姿を見たものは誰もいないのだ。今日はここまでなのだ。」
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