ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「がりっ、ぼりっ」

千世子「なに食べてるのだ?」

悠「固形コンソメ」

千世子「え?」

悠「固形コンソメ、ぼりごりっ」

千世子「……えーと、マグダラのマリアの最後のじゅぎょーしますのだ。伝統的な教会が、マグダラのマリアを娼婦と決めつけ、忌まわしいもののように扱うのは、イエスの妻だったからかもしれないのだ。神聖不可侵でもある神の子イエス・キリストが妻帯していたなどということは、何よりも排除すべき事柄なのだろう。だからこそ、妻帯したイエスに罪を着せるのではなく、妻としてイエスのもとに「押しかけた」娼婦同然のマグダラのマリアを罪深い女としたのではないかなのだ。」

摩耶「濃いもの齧ってるね。」

悠「キャラメルが置いてあると思って口に放り込んだらコレだった。ムカつくから意地で食ってる。」

神姫「意地の張り方が間違ってるわね。」

亘理『……口の中へいきなの?』

悠「色々と気持ち悪いけど平気」

千世子「面白いことに、ペトロなど男性の使徒が、女性のマグダラのマリアに嫉妬するのだ。人前でもキスしてはばからないほど仲の良いイエスとマグダラのマリアが気に入らないようなのだ。そこで、どうして彼女ばかり可愛がるのかと、師匠を問い詰めるのだ。しかし、イエスから返ってきた答えは、かなりノーマルな答えだったのだ。「なぜ彼女のように愛せないのだろうか」」

亘理『それは平気って言わない思う』

累「はい、お水」

悠「……お前ひとくち飲んでみろ」

累「?」

悠「ひと口飲んでみろ」

累「?」

悠「はてなでゴリ押すな!」

千世子「それはたぶん、男より女の方が好きだっただけだろう。しかし、ひょっとしたらマグダラのマリアが現れる前は、師匠と弟子の間の愛が、弟子たちにとってそれなりに満足のいくものだったのかもしれないのだ。そのような師弟愛をひとりの女に邪魔されたと感じたことが、後世の教会によるマグダラのマリア排斥運動に繋がったのだろうかなのだ。」

累「はいはい、飲んでみますよ。みーちゃん。」

千味「いただくきますっ!ゴクッ!こぶぶぶっ、お、おいひぃ、ぶぶぶ。」

リリス「わぁ、泡吹いて蟹みたいね」

スキュラ「泡が赤色になって来ていますね。」

悠「毒じゃねぇか!!」

千世子「キリスト教以前の女神たちは、娼婦という称号を嫌ってはいなかったのだ。ギリシャ神話での愛と美の女神アフロディーテも古代メソポタミアで崇拝された戦と豊穣の女神イシュタルも、そのときの娼婦、つまりアイドルだったのだろう。なお1224年から現在に至るまで、マグダラのマリアの名前を冠した修道院は、娼婦から改心した女性たちの信仰を集めているというのだ。以上、マグダラのマリアのじゅぎょーだったのだ。」
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