ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(3/24/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「……」

花描「なに聞いてるんだ?」

悠「明け烏」

神姫「落語?」

悠「たまに聞きたくなるんだよな。」

摩耶「落語って言葉の魔法みたいだよね。なん人もの役になったりするから」

千世子「なら今日のじゅぎょーはこれなのだ」

【スペルキャスト】
言葉に宿る不思議な魔力

悠「なんにでも授業に持っていくようになったな…」

千世子「「スペルキャスト」とは、呪文をとなえることで魔法を発動する行為を指す、とても一般的な魔法スタイルなのだ。とくに西洋の魔法使いは、ほとんどがスペルキャストによって魔法を発動するのだ。」

花描「呪文詠唱ってことか」

千世子「例外としては、文字を刻んだだけで魔法を発動する「ルーン魔術師」がいるのだ。また、イエス・キリストは、死者の蘇生(リジェネレーション)や病気の治癒、自ら復活する(リザレクション/リインカーネーション)など「魔法としか思えないような奇跡」を多数やってのけたが、呪文を唱えるような行為は一切なかったのだ。そのせいか、キリストの行為は「魔法」ではなく、あくまで「奇跡(miracle)」と表現されるのだ。」

悠「奇跡か…」

神姫「なに?奇跡は起きないとかいうタイプ?」

悠「いや、奇跡はおきます。おこして見せますってノリコ・タカヤに言われたいタイプ」

花描「は?」

悠「ガンバスターだ。」

摩耶「はーい、ちょこ先生。呪文をとなえて魔法が発動するっていうのは、いったあどういうメカニズムなんですか?」

千世子「呪文を必要とする大きな理由として、「魔法を使うには精神の集中が必要」ということがあげられるのだ。呪文をとなえる間の時間を利用して心を落ち着け、精神力を高める効果を狙っているのだ」

悠「あぁ、数字の素数を数えると気持ちが落ち着くアレか。」

摩耶「プッチ神父だね」

悠「ホワイトスネーク!!」

千世子「もうひとつ呪文が必要な理由は「言葉」そなものに魔力が宿っているからなのだ。日本でも昔から、言葉には言霊が宿っているとされてきたのだ。」

悠「言葉そのものが持つ、霊的な力か。」

千世子「だから声にして言葉を発するだけでも、さまざまな効果があると信じられてきたのだ。ところが、こうした「言霊」の思想が古くから受け継がれている日本では「魔力を発揮するための行為」として、呪文以外のさまざまなバリエーションが存在するのだ。手振りだけで魔力を発揮する「九字」や歩くだけで魔力を羽鳥「へんばい」が、その代表なのだ。以上、スペルキャストだったのだ。」
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