ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「おい、クズ」

葛葉「「は」までつけたまえ」

悠「やかましい、お前、亘理の下着でマスクを作ろうとしたらしいな」

葛葉「最初は下着を繋ぎ合わせて抱き枕を作るつもりだったが……」

亘理『ひぃっ!』

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。前回の続きからでブリテンでアーサー王に仕えたトリステンは、そこでイゾルデと同じ名を持つ女性と結婚するのだ。そして、アーサー王のために幾多の戦場で活躍するが、ある日ひん死の重傷を負ってしまったのだ。命が長くないと悟ったトリスタンは、最後にかつて愛したイゾルデに会いたくなり、船で使者を出してしまうのだ。使者が帰還するときに、イゾルデをともなうならば白い帆を、拒否されたなら黒い帆をあげるように言い渡したのだ。」

悠「とりあえず、アイアンクローの刑な」
メリリッ!
葛葉「おのりゃぁぁっ!」

摩耶「累ちゃん、殴るのとか好きでしょ?アレをサンドバックにしたら?」

累「勘違いしてもらっては困る。私は殴るのが好きなんじゃない、苦痛に歪む表情を見るのが好きなんだ。」

リリス「わかる」

千世子「トリスタン重傷の知らせを使者から聞いたイゾルデは、夢を通してトリスタンに会いに行ったのだ。しかし、トリステンのブリテンでの妻、白き手のイゾルデは、嫉妬から「黒い帆をあげて帰還した」と、彼に告げてしまったのだ。絶望したトリスタンは生きる望みを失い、そのまま息絶えたというのだ。そして、トリスタン死去の報に接したイゾルデもあとを追うようにして死を選ぶのだ。」

累「絶望に歪み」

リリス「悪徳に捩れる」

神姫「魔界にはああいうのばっかりなの?」

サタン「大概独特の考え方をする唯我独尊な奴が多いけど、アレはその中でも異質なのだ。」

スキュラ「末恐ろしいですね。」

千世子「二人の墓は別々の場所に建っているが、トリスタンの墓から伸びたツタが、何度切ってもイゾルデの墓に絡みつき、いまでは二つの墓を覆い尽くすほどになっているのだ。」

婀娜「……」

雨「……」

婀娜「…………」

雨「……なに?」

婀娜「え?」

雨「え?」

悠「アッチはあっちで変な空気になってんな」

千世子「この話はケルト伝説を起源に持ち、中世になって一編の物語として完成し、その後アーサー王伝説に組み入れられたのだ。また、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」の元ネタになったといわれているのだ。以上、イゾルデのじゅぎょーだったのだ。」
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