ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

亘理『うぅっ……ううぅ……おいしぃ』

サタン「泣きながら食べてるのだ」

悠「そんなにうまいか、豚の脳味噌」

亘理『きついけど、濃厚くりぃーみー』

神姫「しっかり味わってんじゃない」

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。前回の続きからでサロメはファム・ファタールの代名詞として、歴史上の妖女・悪女の代表格として、世界中にその名が知られているのだ。特にキリスト教世界においては、救世主キリストの洗礼者であるヨハネの首を欲して、それを盆に載せさせたのだから、たしかに残酷な心を持った妖女だと思われても仕方がないかもしれないのだ。しかも、1891年に出版されたオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」では、事もあろうに聖職者であるヨハネに色仕掛けでいいよるなど、悪徳の上塗りを描かれてしまうのだ。」

摩耶「ほぼ白子だしね」

神姫「こっちの方がやや濃厚かしら」

悠「白子は白子であっさりと部分もあっていいんだけどな」

亘理『ううっ、あの頭蓋骨が脳裏から離れない……』

悠「人骨じゃないから平気だろ」

千世子「新約聖書では、サロメという名前が登場するのは、ヨハネ殺害の個所ではなく、ヘロデ大王家の家族関係を述べた部分なのだ。」

亘理『どっちもきついよ!』

悠「それいったら素手で頭蓋骨割って脳味噌を抜き取ったおれはどうなる」

摩耶「このスプラッタサイコ野郎!」

悠「まさかの罵倒!!」

神姫「なれてるでしょ、罵倒されるの」

千世子「ただし、マタイの福音書によるとヘロディアの娘が踊りの褒美にヨハネの首を要求したと記述されているので、これがサロメの事であろうといわれているのだ。」

悠「まぁ、なれてますけども」

亘理『それはどうなの……』

摩耶「しかも、興奮すると」

悠「……ケースバイケース」

神姫「引くわ」

千世子「サロメはこの事件の後に、ヘロデの息子二人と婚姻して2番目の夫との間に子供をなしたらしいのだ。いずれにせよ、残された記述からは、両親のように悲惨な末路を遂げてはいないように見えるのだ。」

サタン「牛とかの脳味噌もうまいのだ?」

亘理『うっ…』

悠「ウシ、ブタ、鶏、ヤギ、ウマ、サル……は料理としてあるな」

摩耶「ただ、脂肪とコレステロールがめっちゃあるんだよね」

亘理『そうなの?』

千世子「それはきっと、ヨハネの死を望んだのはサロメではなく、サロメの母ヘロディアだったからではないだろうかなのだ。サロメはあくまでも、母の気持ちを代弁して、ヨハネの首を所望したに過ぎないのだ。ワイルド以前の小説「エロディア」では、サロメはヨハネの弟子であり、ヨハネが処刑されるとそのあとを追って命を絶ったことになっているのだ。サロメが、ファム・ファタールとして、その地位を確立したのは、彼女の死から1800年ほどもたった19世紀になってからだったのだ。」

悠「脳はその働きを支えるために60%が脂肪であり、それは主要部分である髄鞘の70%が脂肪だからだな。」

亘理『だからあんなに濃厚なんだ』

悠「こってりだぜぇっ」

神姫「食べすぎたら脳が腹につく感じね」

亘理『めっちゃコワイ』

千世子「サロメがヘロデの午前で見せた踊りは「7つのヴェールの踊り」と言われていて、オペラやエイズで描かれる場合のクライマックスとなっているのだ。身にまとった7枚のヴェールを、踊りにあわせて1枚ずつ脱いでいくのだ。ヘロディアの娘さロメは、若かりし頃のヘロディアを生き写しと言われるほどの美女だったので、好色のヘロデならずとも、見惚れる光景だったに違いないのだ。以上、サロメのじゅぎょーだったのだ。」
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