ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(3/20/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「ゴーレムといえば?」

摩耶「ロトの紋章だよね。」

悠「ちなみにおれ程のゲーマーになると妖精の笛抜きでゴーレム倒したけどな。」

花描「マジで、倒せんのあれ」

悠「レベル二十まであげて買える限りの限界装備で整えて運がよければ」

神姫「それって別に妖精の笛手に入れた方が早いわよね。なん十倍も」

悠「まぁな。」

千世子「ドラクエもいいけど、生命創造のじゅぎょーの続きなのだ。」

悠「あ、まて、これだけはいわせてくれ。おれはけっして妖精の笛のありかが解らなかったわけじゃないんだからね!」

摩耶「ツンデレが蹴り入れてくるよ?」

悠「ツンデレという言葉がまさかの擬人化…」

神姫「会話が異次元過ぎるわ。」

千世子「カバラの術で作られる人工生命はゴーレムと呼ばれるのだ。彼らのゴーレムは、生物というよりむしろロボットに近いものだったと考えられているのだ。」

花描「つまりは命令に忠実な無心人工生命か」

千世子「カバリストの中でもごく少数ながら「カバラの秘術を読み解くことに成功し、ゴーレムを製造した」と伝えられる者が存在したのだ。それらの話によれば、ゴーレムの原料には土を使ったようなのだ。」

悠「王道だな」

千世子「まずは土を固めてゴーレムの型を作る。もちろんこれだけではただの人形でしかないのだ。そこで儀式を行った上で「真理」を示す文字をゴーレムの身体に刻み込む。するとゴーレムは、命を吹き込まれて動き始めるのだ。身体に刻み込まれた文字を消すと、ゴーレムは動きを停止するのだ。」

花描「ぬ~べ~思い出すな。」

悠「懐かしいな。」

神姫「錬金術師やカバリストたちは、なぜ生命創造にこだわるの?」

摩耶「自分の命令に従う下僕が欲しかったからじゃない?」

千世子「それもあるのだ。実際、カバリストたちの作ったゴーレムは、ある程度は実用目的に使われたようなのだ。」

神姫「そんなの適当に拾えるのに」

悠「おれを見るんじゃない」

千世子「しかし、錬金術師たちが作ったホムンクルスは、何の役にも立たない小人だったのだ。それでも彼が研究し続けたのは、「生命創造」が神の業そのものだからなのだ。錬金術師によるホムンクルス研究は「自ら神に近づきたい」という願望の表れであったのだ」

花描「つまりは神を目指した魔術師ってことか」

悠「神ねぇ…おれは髪のが好きだけどな。」

摩耶「バッカスの生まれ変わりみたいな癖に?」

悠「だれが酒の神だ」

神姫「疫病神とか?」

悠「なに?おれはそんなに嫌われてるのか…。」

千世子「そもそも神という存在は、魔法の奥義をすべて身に付けているものなのだ。例えば、錬金術の原典ともいえる「ヘルメス文書」の著者はヘルメス神なのだ。モーゼはカバラの秘術を、神から直接さずかっているのだ。」

悠「たしかルーン魔術の開祖はオーディンだったな。」

千世子「そうなのだ。魔術師たちにとって「神」は、信仰の対象というより、「魔法の道を極めた先達」という意味で尊敬すべき対象なのだ。以上生命創造のじゅぎょーだったのだ。」
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